第5章 闇夜の調べ
どうしてジェイドさんだけが知っているの?
それに、何故このタイミングなのだろうか。何故、今私は一人ここにいるのだろうか。
今までほぼ屋敷から出たことの無かった私がいないこのタイミングでなんて。
そして、ルシスさんが私を誘いに来た時の、ルシスさんがジェイドさんにした耳打ち、そしてその後の違和感を思い出した。
「、も……もしかして、知ってたんですか?だから私を屋敷から連れ出したんですか?」
異様な空気に、周囲がざわつく。
一瞬だけ、ルシスさんの眉が動いたような気がした。
周りの人達は皆、その手を止めて私達の事を見ていたが、そんなこと今の私には気にしていられる余裕など無かった。
私はルシスさんの手を掴んで、必死にその瞳を見上げる。
「ねぇ、……お願い、答えて!ルシスさん!!、!」
私がルシスさんの名前を口にした瞬間、周囲の空気が一変した。ザワッとした瞬間、シュバルツの人達の空気が張りつめた緊張感に包まれるのを感じた。
「ねぇ、お願い……答えてください…。」
「……ええ。その通りです。私が貴女を巻き込まないようにと、私の元へ連れてきました。」
それは、驚く程に冷静で、けれども取り乱す私を優しく宥めるような声色だった。
「なんで、ジェイドさんは本当に大丈夫なんですか?ハイデスさんへは…」
「私の方からも、屋敷へのフォローは入れております。それにハイデスが知っていたとなると少し事態が変わってきますので。」
淡々と説明するルシスさんに、私のこの混乱した頭ではその言葉に付いていくのもやっとだった。
「そんな、ジェイドさん一人なんて…!本当に大丈夫なんですか?お願い、ルシスさん……助けて。」
ジェイドさんに、これ以上何かあって欲しくない。今の私の思いはそれだけであった。