第5章 闇夜の調べ
ざわざわと一気に騒がしくなる部隊。きっと領地の人であろう人が他の人に何か知っていたとか詰め寄られている。嫌な予感が胸にせり上がってくる。そうして、続く言葉に膝から崩れ落ちそうになる。
「目的地は?!」
「そ、それが……クロヴィス邸だと…」
目の前が真っ白になった。ルシスさんが力のうまく入らなくなった私の身体を支えてくれている。
「なっ!?バカを言うな!家主不在中に軍をけしかけるだなんてどういうことだ!!許される筈がないだろう!」
「だ、だからこうしてハイデス隊長へ御報告を、!」
怒鳴るような声が飛び交う中、困惑した表情をジェーンさんに向ければ、確かにその視線がかち合った。
「あの、それって、どういうことですか……何が、起きてるの…?」
「、あ……アンリ様…」
一体この事の有様を私に何と言おうか躊躇っているジェーンさんに、私は今にも不安で泣きそうになる。こんなにも弱くてはいけないというのに、私の大切な人に何かあったのではと思うと耐えられそうにない。
「え、だって、屋敷にはジェイドさんがいるのに……!」
そう言った私に、大丈夫だと落ち着いた声を掛けたのはルシスさんであった。
「ご安心を、お嬢様、今回のことについてジェイドはすでに把握済みです。」
「え、で、でもっ……本当に大丈夫なんですか??屋敷に軍なんて、絶対良くないことですよね?ハイデスさんは!?この事を知っているんですか?」
私と目の前のこの人は、ここにいる全員が今回のことの当事者だと思っているだろう。
「……今回については、ジェイドのみに。」
「え、なんで?どうしてですか?」