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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ


そうしているうちに、準備が出来たようだ。
先程展開した結界の中で、大きな壁のようなものが両者陣形を守るように形成されている。それはまるで光り輝く宝石を薄く薄く切り落としたかのようで、日の光に反射してキラキラと光り輝いていた。時折その光に黒い影が掛かるのが黒魔術の特徴だと、ジェーンさんが言う。大きな声がしたと共に、両方向からまるで自在に動く弓矢のような黒い光線が飛び出して、先程の壁に容赦なく降り注ぐ。

「うわ、すごい……」

「こちらは攻撃魔法と、防御魔法の実践訓練ですね。先に相手の防御壁を二度破壊した方が勝ちです。負けたチームはウェイトを着けて城外を50周とトレーニングの罰が待ってるので、訓練といえどかなり必死にやってますね。」

うわぁ!めっちゃ体育会系!!と叫びそうになったのを何とか必死に堪えた。

激しい光が飛び交う中、パキン、と一方の壁が破られる。それはキラキラとガラス辺が舞うように空へと消えていった。

「わぁ、綺麗ですね…。」

「ふふ、味方としては絶望的な光景ですがね。」

あぁ確かに、自分達の防御壁が砕け散った光景をどうして綺麗だと言えようか。しかし、間髪いれずに次の防御壁が張られ、また激しい攻防が始まる。

訓練と言っても正直筋トレみたいな、素振りとか、動かない的を狙うようなものを想像していたので、目にする激しさに驚きだった。

ふとルシスさんの方を見ると、その視線は演習場の出入り口に向けられており、思わず私もならってその方を見た。

「何でしょう、騒がしいですね。」

ジェーンさんが言うが早いか、黒魔術師団であろう人が一人駆け込んでくる。

「隊長!!ハイデス隊長はどこに?!」

余程焦って来たのか、息は上がり額を汗が流れ落ちる。私も、開口一番聞かされるハイデスさんの名前に何があったかと思わず注目したが、ここにいる誰もが同じように青ざめたその人の顔を気遣わし気に見ていた。

「どうした。隊長は今陛下へ謁見中だ。」

「大変なんです!第一騎士団が!!」

緊急事態だと叫ぶその者の様子にこれはただ事ではないと騒めき立つ。何があったのだと捲し立てるジェーンさんに言いにくそうに躊躇った後、意を決した面持ちで顔を上げた。

「クニフォフィアに、隊長の領地に100騎程向かったとの情報が!」

「は?なんだそれは!どういうことだ?!」
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