第5章 闇夜の調べ
「うるさいぞカール、ご令嬢の前ででかい声を出すんじゃない。それにお前は遠乗りから帰ってきたばかりだろう。雑務は済ませたのか?」
「あ、やべ!!そうだった!ちょっと、アリアス、一瞬アンリちゃんの案内頼んだ!」
慌てて方向を変えたカールさんが、アリアス!アンリちゃんに変な事すんじゃねぇぞー!と遠くから叫ぶ。もうあんなに遠くに行ってしまったのか、足が速いんだなぁ、なんてことを私は呑気に考えていた。
「はぁ、まったくアイツは……騒がしくて申し訳ありません。」
「いえ、楽しい方ですね。」
隊長も、どうしてあんな奴を騎馬兵長に任命したのか。そうごちるアリアスさんに、何だか可笑しくなって笑っていれば不思議そうにされた。
「あ、すみません……なんだか、アリアスさんとカールさんって、まるでハイデスさんとエルメスさんみたいだなって思ってしまって。」
そう、あの二人の関係性によく似ている。私も最初、この二人はどうやって仲良くなったのだろうと不思議に思ったくらいだが、きっとあの二人もこうして仲がいいのか悪いのか、喧嘩は勿論色々な経験を一緒にして今の関係に落ち着いたのだろうなぁと想像出来る。私の言葉に、ジェーンさんも心なしか笑っているので、やっぱり間違っては無いのだろう。
アリアスさんはというと、俺とカールが、隊長と副隊長に…?と妙に考え込んでしまっている。そこまで深い意味ではなかったのだが。
そうしていると、奥から一人の魔法師が掛けて来て何やら準備が出来たのだと伝え、聞いたアリアスさんがすぐに動いた。
「先程言ったものをお見せしましょう。少し危ないので、ここから動かないように。ジェーンの傍から離れないでくださいね。」