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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ




「ハハハ!流石のお前も驚いたか!ハイデス隊長のアンリちゃんが態々挨拶に来てくださったんだと!」

「そ、そんな何もご用意出来ていないのに、挨拶だなんて。」

挨拶というよりも最早これは弾丸ツアーだというのに、そんな説明のされ方をされてはと思わず焦る。それでもまだ暫くポカンとしていたアリアスさんは、急に顔色を変えすごい速度で頭を下げた。

「っ、申し訳御座いません!まさか隊長の……ああ、こんな見苦しい姿で、事前に知っていたならばもっときちんとした対応をしたというのに!」

「い、いえ、そんな……気にしないでください。」

「ほら、アンリちゃんがこう言ってくれてんだから、ありがたく思えよ~?」

そんなにハードルを上げないでくれと思うのだが、カールさんは相変わらず何故か得意げでとても楽しそうだ。そういう本人の方が疲れた恰好をしているという事は然程関係が無いらしい。焦るアリアスさんも、きっとハイデスさんへの配慮だろうが、こんなにも謝られてしまうとこちらが恐縮してしまう。
頭を上げてくださいと頼んでやっと普通にしてくれたのだが、すっとどこか申し訳なさそうにしていて、最初のあの不機嫌そうな冷たい目の美人はどこに行ったのか。その傍らでニヤニヤと笑っているカールさんが対照的で、騎士団というものはもっとお堅い空気の厳しいイメージだったのに、思っていたよりもずっとフレンドリーで何だか安心した。

「おい、カール!その呼び方は失礼ではないのか?」

「いえ、エルメスさんもそう呼んでくださってますし、大丈夫ですよ。アリアスさんも呼びやすいように呼んでください。」

「温かいお言葉、感謝します。お礼と言ってはなんですが、これでもカルヴァン王国一流魔法師、この後に少し面白いものをお見せ致しましょう。」

「あ、アリアス!お前抜け駆けは卑怯だぞ?!」

恭しく礼をするアリアスさんに、ズルいとでも言いたげに声を上げるカールさん。そういえばこの二人は、性格すら対照的に感じるも随分と仲がよさそうだ。その証拠に、ジェーンさんは何時もの事だと言いたげな様子で二人のやり取りは気にもしていない。
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