第5章 闇夜の調べ
でも実際、気になるのは無理もない程にその場所はこの演習場の中でも目に付く。円形の大きな舞台があり、少し高くなっている。白く少しキラキラしたその場所はに、カールさんやジェーンさんとはまた少し変わった服装の人たちが杖を持ち集まっていた。
カールさんは騎馬隊、ジェーンさんは主に剣部隊らしく、身軽そうな隊服だ。
それに比べて、魔法陣師と呼ばれた人達はローブのような、フードの付いた長い羽織を着ている。
なんだか、いかにも魔法使いって感じである。
舞台の上で数人が円になり、何か呪文を唱えると白い地面に不思議な模様をした魔法陣が現れた。
「わぁ、きれい……。」
キラキラとしたものが宙を舞って見える。そうか、あの舞台が白いのはこうやって何度も何度も魔法の練習を重ねた結果なのかと理解した。
そうして、周囲を薄い膜が覆うと空がガラスドームに包まれたかのようになる。魔法って、こんなに綺麗なんだと初めて知った。
「おーい!アリアス!!」
「なんだカール、今は鍛錬中だという事が見て分からないのか。」
カールさんが親しげな様子で誰かを呼ぶと、一人が此方に気が付いた。
バサリとフードを下ろすと、肩よりも少し長いくらいの黒髪を一つにまとめ、切れ長の目を細めながら鍛錬を邪魔されたと少し不機嫌そうである。
「鍛錬なんていつだって出来んだろ?それにほら、お客様だぞ。」
「む、これは失礼を……。自分はアリアス・ファン・デル・ボルフと申します。」
アリアスと呼ばれた彼は此方に気が付くと、その不機嫌そうな目を一瞬で和らげ、胸に手を当てると丁寧に腰を折って見せた。所作がかなり上品で、顔立ちも中性的。
しかし、明るく活発的なカールさんより落ち着いていて、低い男性的な声に少しギャップがある。勿論、いい意味で、だ。第一印象は綺麗な人。魔力が強いと容姿も美しくなるとか、そういう仕組みでもあるのかとさえ思えてくる。
「すみません、お忙しい時にお邪魔してしまって……アンリ・ファン・クロヴィスです。」
「……え?」
自己紹介をしつつ、やはりこんな時に見学だなんて邪魔になるよなと思っては、出来る限り丁寧な挨拶を心掛ける。しかし、その相手であるアリアスさんは何とも拍子の抜けた、寧ろ唖然とした表情で私を見た。
何かやらかしたかと思ったが、そんな思いはカールさんの爽快な笑い声に搔き消された。
