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私を愛したモノなど

第2章 1 箱庭


私が一人で悶々と考え込んでいるうちに彼は建物の奥へ奥へと進んでいく。
やっぱりどこまで行っても床も天井も一面真っ白で、長い廊下と下へ下へと続く階段をひたすら進む。

「一体どこに向かってるんですか……?」

何だか少し怖くなって彼に聞いても、微笑まれるだけだった。

一体、どこに連れていかれるんだろう……
この世界の事も聞きそびれちゃったし、これからどうすればいいのか、今まで以上に先行きが不透明で少し不安になる。
そして、彼が何を考えているのかが分からない。

肝心なことはすぐにはぐらかされてしまう。
彼の癖なのか、それとも言えない何かがあるのか……

どちらにせよ、小さな不安と彼に私自身の事を早く伝えなくてはという気持ちが大きくなる。

そんな私を他所にセラフィムが進んでいくうちに綺麗な石造りの道は一気に粗っぽくなる。
壁も天井もゴツゴツしていて、まるで洞窟の中を歩いているようだった。
でも、その壁はうっすらと透き通っている。

「ほら、付いたよ。」

「わぁ……!」

すると目の前に現れたのが、大きくて、物凄い重厚感のある扉だった。
中心には青い石のようなものがはめられていて、その石を中心に装飾が施されている。
更に驚いたことに、その扉全体が水晶のようなもので出来ているのだ。

扉の奥から差し込む光が反射して、辺りを七色に染める。

「何これ、凄い綺麗……」

「フフ、驚くのはこれからだよ。」

そう言ってセラフィムは私を抱いたまま扉の前へ立つと、独りでにゆっくりと開いていく。

何、これは、魔法?
でもこんなものを前にすれば、魔法があった位では驚かないかもしれない。

そんな事を思いながらも、ギギギギ、と音を立てて開いていく扉を見詰める。
そしてその先にあったのは、先程の扉の事なんて忘れるほどに美しい世界だった。

全体が分からない程に広い空間。
その広い洞窟のような空間の先、目の前にはぽっかりと大きな穴が開いていて、そこから見えるのは真っ青な空と雲で、地上なんて見えない。
そしてなんと、床、天井、全てが宝石のようなもので出来ていた。
辺り一面、水晶の固まりのようなものが飛び出ていて、その大きさが大きなものでは見上げるほどに大きい。
空間全てが輝いていて、まるで宝石の中に入ったようだった。

「え、なに、ここ………宝石みたい……」
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