第2章 1 箱庭
「え、あ、あの……それって、一体どういう意味で、」
「フフ、後で教えて上げるよ。ほら、今はこれ食べちゃおうか。」
そう言われてしまっては、無闇に聞けなくなってしまう。
仕方無しに果物をかじっていると、彼がキツネに向かって、何お前、随分と良いもの食べてるね。なんて言って白い果物を食べるものだから私はビックリして声を上げる。
「え、そんなもの食べちゃ……、!!」
「ん?……そっか、これの意味も知らないんだ。」
これの意味……?
白い果物に意味があるっていうの……??
「これはね、特別なんだよ。飛び切り甘くて美味しい……君のは特に、ね。」
そう言って味なんて変わらない筈の果物を食べながら意味深に笑う彼が、何だか少し怖かった。
彼は何を言っているの?
私は肝心な部分はまだ何も分かっていない。
「さて、もう少し時間があるから、特別なものを見せて上げるよ。」
「ひゃっ?!」
突然彼は私を所謂お姫様抱っこで抱き上げられると、隣の部屋で簡単な靴を履かせてくれた。
欧米式なのかな?なんて思うが、再び抱き上げられてしまって、そのまま部屋を出ていく。
着せられていたワンピースは思いの外セクシーなデザインらしく、丈は長いのにその殆どがレースで出来ていて、裏地があるのにうっすらと体のラインが透けて見える。
抱き上げられたことで垂れる裾は本当に淡いグレイッシュトーンの花柄の刺繍が上品に施され、その繊細な色合いに思わず見とれてしまうが、羽織って着るらしいタイプのそれは前を止めるモノが幾つかのリボンで結ばれているだけ。
要するに、無闇に動くとほどけてしまうかもしれない。
勿論、中に着ているものなど何もない。
そう、今更気が付くのもどうかと思うのだが、私は下着すら着ていない。
抱かれた状態で暴れることも出来ないので何とか下ろしてもらおうと、一人で歩くと言ったのだが、何度言っても聞いてもらえなくて、私は大人しく彼の腕に抱かれて運ばれるしかなかった。
「……あの、時間って一体何の時間なんですか?」
「その時になれば分かるから、大丈夫だよ。」
ちゅ、とまるであやすように額に口付けられて、完全に彼のペースに呑まれてしまっている自分がいることに気付いて、同時に情けなくなる。
今までの自分ならこんなちょっと前に知り合った男の人とここまで距離を縮めるなんてあり得なかったのに。