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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



「え、えっと……その、ルシスさんには、とてもお世話になってますので、でも、どう、というものでは、決して…。」

流石に本人を目の前にして詳しく言うのも恥ずかしいのと、同時に咄嗟に昨夜と今朝の事を思い出してしまって下を向いてしまった。何とも下手な誤魔化し方だと我ながら思ったが、今の私にはこの程度の誤魔化し方が精一杯なのだ。しかし、私の予想とは違い二人は違う場所に反応したらしい。

「っ……!!」

「おい、今の聞いたか、ジェーン……お師匠様、名前で呼ばせてるんすよ。これは相当だぞ……?隊長と国王陛下、理事長以外にあのお方を名前で呼んでる人間を見たことがあるか?俺は、ない。」

「っぁああ、あああ……なんと、何と羨ましい、私は一人の時ですら、その名を口にすることすら憚られるというのに……いえ、ですが私は師弟関係というものがある故の……」

何やらぶつくさと一人唱えているジェーンさんと、驚きながらはぁ、と感心した様子のカールさん。
あれ、そんな変な事言わなかったよね、と思わずルシスさんの方を見ると優しく微笑み返されたので何だか恥ずかしくなってしまった。まずかったのかと思ったが、そういうわけでもないのか?
混乱する私を他所に何だか盛り上がってしまった二人に、これ以上妙なことを聞かれるのは非常にまずいと焦る。
すぐにでも話題を変えさせたくて、周囲を見回す。私は丁度目についた、青い光と共に何やら訓練をしている人たちは何をしているのかと声を掛けることで誤魔化した。

「え?ああ、あれは魔法陣の形成の鍛錬すね。魔法陣師って言って、結界やら転移魔法、多人数の強力魔法何かを使うときに中心となって魔法の組み立てとかをする舞台ですかね。気になるようであればちょっと覗いてみますか?」

「え、良いんですか?」

カールさんは然程ルシスさんやハイデスさんとの関係を知りたいわけではなく、単なる興味と世間話の一環として話題を振ったようで、私のあからさまな話題の変え方にも気にした様子も無く答えてくれる。その横で、いまだソワソワと何か言いたそうにしているジェーンさんが視界に入ったが、気にしないフリをした。

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