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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ



しかし、軽くお城の雰囲気が分かればと思っていたのに、まさか黒魔術師の方々の所に行けるだなんて。少しの緊張とわくわく感とに胸を高鳴らせながら着いたそこは、私が思っていたよりもずっと猛々しくて活気にあふれていた。
勿論、魔法陣で転移してきた時からその声や音は聞こえていたのだが、目の前にした時の迫力は想像を優に超えてきた。剣を交えて訓練をする人達や、魔法を使って何やら試し打ちの練習をしている人達がいて、時折大きな音と土煙が上がる。

「男臭くて悪いな。今は警備とかの配置の仕事があるやつ以外が自由に訓練してる。だから割と緩い感じでやってるから、見学するにはちょっと物足りねぇかもしれないが、勘弁してくれ。」

「いえ、そんな……すごい、こういった訓練だとか、私初めて見ました。」

ここにいる人達は皆、黒い服に黒い髪で、栗色の髪を風に靡かせているのはエルメスさん一人だと知る。ここは黒魔術師団の訓練場らしいので、当たり前のことなのだがハイデスさんやルシスさんと同じその色に、何だか不思議な安心感を覚えながらも、その景色に思わず見入ってしまう。すると、その中からこちらに気が付いたらしい一人が私達の元に向かって走ってきた。

「エルメス副長!遅かったじゃないですか。俺も先程遠乗りから返ってきて……って、こちらのご令嬢は?どうしてこんな場所に……」

なんで連れてきたんだ?という表情を隠せない様子のその人に、何故か得意げに鼻を鳴らしたエルメスさんが徐に私の手を取った。

「こちらのご令嬢か?お前、知らないだなんて、そんな失礼な事をよくご本人の前で口に出来たもんだなぁ?俺らの隊長様、クロヴィス家のご令嬢様だぞ?」

そ、そんな言い方しなくとも、と焦る私を他所に予想以上の反応を見せたのはその目の前の黒騎士さんであった。

「え?!は、まさか!!!あの?!ハイデス隊長のシャッツ!!アンリ嬢であられますか?!」

エルメスさんのちょっと煽る様な口ぶりなど既に忘れたかという程、その視線は真っすぐに私に向けられている。しかもその視線が飛び切りのお宝でも見つけたかのように輝いていて、その勢いに私は思わず後ずさりしてしまった。
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