第5章 闇夜の調べ
「え?いいんですか?」
エルメスさんからのまさかの提案に、思わず目を輝かせてしまう。
だって、そんなの絶対に楽しいに決まっている。普段ハイデスさんが仕事している場所が見れるんだ。そう思うと一気にワクワクしてきた。
「勿論、俺ももうすぐ合流する予定だったしな。それに……隊のやつら、皆アンリちゃんの事気になって仕方ねぇんだ。顔見せてやったらすげー喜ぶと思うぜ?」
「エルメス、あの泥臭い中にアンリ嬢を連れて行くというのですか?」
「あー、まぁ、その……アンリちゃんが良ければの話ですがね?」
エルメスさんの提案にルシスさんは少し渋るが、私の答えは決まっていた。ハイデスさんに会えなくてもいい。どうしているか、なんとなく感じるだけでも今はいいのだ。
「え、あのっ……私、行きたいです。ハイデスさんの隊の方々も、どんな人たちなのか気になりますし。」
「アンリ嬢がそういうのであれば仕方ありませんね。」
少し我儘を言ってしまったかとも思ったが、私を見て優しく笑ってくれたルシスさんはそう言うと瞬きのうちにその服装と、纏う雰囲気が変わっていた。
「さて、これならばバレずに済むでしょう。エルメス、私は執事という事にしてくださいね、分かりましたか?アンリ嬢も、私の事はバトラーとお呼び下さい。」
そうして、先程まではどこか面影を感じられる雰囲気だったのに、全くの赤の他人にしか感じられなくなり声までも変わったルシスさんと、どこか緊張した様子の隠せないエルメスさんの案内の元、私は黒魔術師団の演習先へと向かった。