第5章 闇夜の調べ
「おや、案外簡単にバレるものですね。流石にもう少し変えないとお前たちには隠せませんか。」
「うっそだろ、ちょっと、アンリちゃん、心臓に悪いって……モルゲン導師にナチュラルにエスコートさせないでくれよ…。しかもさっきのも見られてたのかよ、うわ、ちょっと……まじか。」
「え、あっ、ごめんなさい……やっぱり、ルシスさんにここまでしてもらうのって、失礼ですよね。えっと、私がお城に行ってみたいと言っちゃったから。」
見るからにショックを受けるエルメスさんに少し笑いそうになりながらも、こちらのタイミングが悪かったせいでもあるので少しだけ申し訳なくなった。
「こらエルメス、何をアンリ嬢に謝らせているのです?折角の息抜きというのに、気負わせさせないでいただけませんか。」
「も、申し訳ありません……、あの、今日はまた何を。」
逆にエルメスさんを謝らせてしまったが、けっして重たい雰囲気ではないから、もしかしたらエルメスさんとルシスさんはいつもこんな感じなのかもしれない。
「アンリ嬢が城を見てみたいというのでね。所謂観光ですよ。」
ですよね、とルシスさんに話題を振られて、私は本来ここに来たかった理由を思い出した。
「あ、そうなんです。普段ハイデスさんがどんなところにいるのかな、なんて気になっちゃいまして。」
「あー、なるほどな。じゃあさ、今ちょうど向こうで訓練してっから、見に来るか?ハイデスはちょっと野暮用で出てこれねぇと思うが……。」