第2章 1 箱庭
「ちょっと、お前何してるの!」
セラフィムの焦った声がしたと思ったら、目の前が真っ白い何かに覆い尽くされる。
「ひゃ、なに、あはは、……擽ったい、!」
ペロペロと私の顔を舐められ、ベッドへキツネが乗り上げたのだとそこで理解する。
その勢いに思わず後ろに倒れるが、キツネの勢いは止まらない。
「はい、ストップ。それ以上は僕怒るからね。」
やっと解放された、そう思って横を見れば少し怒った様子のセラフィムがキツネを抱えていて、何だか笑ってしまった。
「まぁ、アンリが笑ってくれたから良いけど。」
「すみません、まさか貴方の子だったなんて……」
「こんなところにいたら野性だと思うよね。……って何お前、気が利くじゃん。」
見るとキツネがカゴ一杯に果物を持って来ていて、器用にベッドへ乗せる。
「持ってくる手間も省けたし、食べようか。ごめんね、ここら辺このくらいしか食べるものなくてさ。」
「あ、いえ、大丈夫です。いつもこれを食べてましたから……」
手渡された果物を受け取って、見慣れたその果物をいつもの癖のように何個か白くさせるとキツネにあげた。
相変わらず美味しそうに食べるキツネを見てふと気が付く。
私、彼の名前以外何も聞いてない。
ここが何処なのかとか、この世界の事とかとにかく聞きたいことだらけだった。
「あっあの、……!」
「ん?どうかしたの?」
「えっと……ここは、どこでしょう?」
当たり障りの無いところから思わず聞いてしまったけれど、突然異世界から来ました、とか言われたら不審者だと思われるよね?
取りあえず無難なところから聞いて様子を見た方が良いかもしれない。
「ここは僕の隠れ家かな。君が居たところと同じ建物だよ?」
「えっ?!あの廃墟みたいな?」
「そう。そのもっと奥に入り口があるんだ。もしかして、入り口以外使ってないの?全部開けておいたのに。」
まさか、あそこの奥にこんなスペースがあったなんて。
怖くてあんまり奥には行かなかったけど、まさか人が住めるような場所があるなんて思いもしなかった。
「え、開けておいたって、どういう……」
「フフ、そのままの意味だよ。ここは君のために用意したようなものなんだから。」
思わず手に持っていた果物を落としそうになる。
今、彼は何と言った……??