第5章 闇夜の調べ
「すごい……お城の中は、みんなあんな風に真っ白なんですか?」
「そうでもありませんよ。ほら、城の周りに細長い塔が囲うように立っているのがわかりますか?あれは城を守る結界のためのものです。あれが一際白く輝いているのは、その結界の魔力の影響を受けているからなのですよ。同じように、結界の近くの建物は強く影響を受けるのであのように白くなります。なので、結界に近い城の外壁はあのように美しい白い見た目をしていますが、内部のほとんどはほかの場所と大差ない見た目をしております。まぁ、わざと魔法石を設置して美しい色を保たせている場所もありますがね。」
「へぇ、そうなんですね……魔力って不思議…。」
きっと、あの色はこの国の力の強さを表しているのだろう。今まで本の中や、ジェイドさんやハイデスさんから伝え聞いた話が、今私の目の前にあるのかと思うだけで圧倒されてしまう。
よく見ると一体どこに繋がっているのかというような橋や階段が、高い塔と塔を繋いでいる。あんなに高い建物、上るだけで疲れ切ってしまうのではと思ったが、ルシスさんのお城も殆ど階段等といった移動手段は使わずに魔法陣でのワープを使用していたことを思い出した。きっと、あんなに広いお城の中でも移動はあっという間に出来てしまうのだろうなぁ、と目の前に広がる壮大な建造物の内部を想像してはワクワクと夢を膨らませた。
お城へは簡単には入れないようになっているのか、近くに来ると深い大きな堀が現れる。そこに掛かる、また長く大きな橋を渡り、広く長い石段を登るのだ。途中、水が張ってあるように見えた堀の中をよく見ると、その下に小さな建物がいくつも見えた。
「あれ、ルシスさん、この堀の中って……。」
「おや、よく気が付きましたね。あの中は水面の下に多くの施設があるのですよ。わけあって堀の下の地下空間が使われているのですが、地下とはいえ中々に神秘的な場所ですよ。」
そんな場所もあるのかと同時に、何故そんな場所にあるのかという疑問もあったが、すぐ目の前に広がった景色にそんな疑問は消し飛んでしまった。
橋を渡り大きな門をくぐったそこは美しく整えられた庭園だった。白い大理石の彫刻のような噴水と、緑の木々のコントラストが何とも優雅な雰囲気だった。ルシスさんに手を引かれ、馬車から降りると思わずキョロキョロと周りを見渡してしまう。