第5章 闇夜の調べ
「、ひっ、あ……あの、ほ、本当にすみませんでした…っ。」
「おや、どうして謝るのですか?私は嬉しかったですよ。アンリ、貴女とこんなにも触れ合えるだなんて、流石の私も思っていませんでしたからね。」
そうして、回された腕に力が込められ、より密着する体とそこから感じる体温に、高鳴る鼓動を止められない。
「え、えっと、あの、もう起きたので……。」
このままではとても不味い気しかしないので、放してもらおうと少し身動ぐが全く放してくれる気配はない。
「おや、もう少し、ゆっくりしていてはどうです?城へ行くのは昼食後ですし。」
「いや、でも、あの…、えっと…!」
部屋でお茶を飲むだとかそういったゆっくりならば私も大歓迎なのだが、恐らく、いや、確実にルシスさんが言っているのはそういう意味ではないのだと言うことくらい私でも分かる。
「フフフ、少し、意地悪でしたかね。」
クスクスと、相変わらず悪戯っぽく笑うルシスさんだが、すっと鋭くなった視線が私を捉えた。
「ですが、そういう貴女も悪い子だ。寝具の上で男に抱き付いたまま眠りこけるだなんて……これではハイデスのあの過保護も頷ける。」
肌触りの良いネグリジェ越しに感じる手付きが、どうしようもなく緊張感を高める。
「あ、あのっ、本当に……その件については…、申し訳無かったと……、!」
「フム、まぁ身体への負担があったことは確かでしょう。そこは私ももう少し配慮するべきでした。しかし、アンリ、気を付けなさい……私とて、二度目は流石に大人しく眠っては差し上げられませんよ?」