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私を愛したモノなど

第5章 闇夜の調べ


私の中に入れる、とは。
大丈夫だと言われてもその言葉にやはり不安にはなる。同時にルシスさんの手の中にコロンと転がる少し大きめの綺麗な水晶玉のようなものを見せられた。

「……なんですか?これ、水晶みたい。」

「これが、魔力を貯めて置ける核になるものですね。アンリ、貴女の限界量とほぼ同量の魔力を貯めておけるものになります。」

なるほど、これが核なのか。
良く見るとその中が揺らめいていて、キラリと時折光を反射している。

「これからも、恐らく時折魔力量の限界が近くなったら魔力を抜かなければならなくなります。その際に、学園で魔力量ゼロでは支障がありますのでね。その為の救済処置といいますか。」

「えっと、学園で魔力無いと授業に支障があるから、取って置くためのもの、みたいなことですか?」

「その通りです。要するにあふれたものを貯めて置けるストック置き場ですよ。」

なるほど、溜めておける魔力の量を溢れるまた私はおかしくなっちゃうけど、魔力を全部抜くのも都合が悪いから、ってことか。

「あれ、でもその魔力を抜くとき?って、その中に入ったものは大丈夫なんですか?」

「おや、鋭いですね。そうです、この中の魔力がその際に抜かれることはありません。」

「へぇ、すごい。じゃあ、それを入れておけば魔力の量って増えるんですか?」

「うーん、正解ではありますが、実際に増やすことが出来る人間はまずいませんね。人間の持つ魔力の量というのは生まれた時から個人個人決まっています。それに応じた器を持って生まれるので、基本的に己の持つ魔力量がその器を大きく溢れさせることはありません。なので、入れたところで普通はただの空の器が増えるだけで、むしろ邪魔になります。」

なるほど、そう世の中上手く行かないらしい。確かに、そんなことが簡単に出来てしまってはこれはまさしく賢者の石だ。魔力量=力と寿命のこの世界、喉から手が出る程欲しがる人は大勢いるのだろう。

「ある程度分かっていただけたようで。さて、実際にやってみようと思いますが、よろしいですか?」

「あ、そ、そうですよね、今から実際にやるんですもんね…。」

そうであった。今からやるのだ、その処置とやらを。
急に目が覚めたようにハッとした私は、先程までとはまた違った緊張感に肩を竦めた。
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