第5章 闇夜の調べ
クロヴィス家にも大きなお風呂はあるのだが、つい部屋の備え付けのお風呂を使ってしまってあまり頻繁には入らない。古い作りだから、と各部屋の備え付けはなく大きな浴室でのお風呂に久々の大きなお風呂に少しだけ楽しくなった。
ただ、説明も兼ねてとメイドさんに背中を流されたのはちょっと緊張してしまう。そうだ、だからクロヴィス家でも浴室のお風呂は遠慮してたんだと思い出しては苦笑いした。
けれども、メイドさんはとても物静かな人で、簡単な世間話程度しか返さないが手際はその分とても良く丁寧で、遠慮する間もなく髪も身体もテキパキと整えられてしまった。仕上げに可愛らしいフリルのあしらわれた真っ白なネグリジェに包まれた私は艶々になった髪の毛を撫でながら部屋へと戻った。
何だか、こんなお城で真っ白な可愛いネグリジェなんてまるでお伽噺の中みたいだ、等と少し浮わついた気分で暖かいフルーツティーなんてものを戴きながら思っていた。
ほんのり甘くてフルーツの香りが美味しい。これは、至り尽くせりだな?とか思うも、こういう時は遠慮するよりも感謝が大切だ、と厚意を受け取ることにも慣れてきた私は目一杯のお礼を告げる。その時に少しだけ、メイドさんが微笑んでくれたのが嬉しかった。
そうしているうちに、コンコン、と控え目にドアがノックされ、ルシスさんが入ってきた。
「お待たせ致しました。フフフ、寛げて戴けているようで何より…。」
「あ、すみません……お風呂頂きました。」
お風呂上がりでほかほかの状態だった私はちょっとだけ気恥ずかしくてはにかんだ。
「あの、これも……お借りしちゃったみたいで、ありがとうございます。」
「いえ、お気になさらず。とても良く似合っていますよ。」
そっと手を取られて指先に口付けられた。
ハイデスさんもそうだが、こういうちょっとしたスキンシップが近い上に、気付かぬうちに距離を詰められていてなす術もない私はやっぱり恥ずかしくなって俯いた。この人達は何をしてもとても様になるから尚更だ。
気が付けばメイドさんはもう居なくなっている。
「え、えっと……今度は何するんでしたっけ?」
「貴女の中に核を埋め込みます。その説明もしなくてはなりませんね。こちらを、入れさせてください。少し怖いかもしれませんが大丈夫ですよ。」