第5章 闇夜の調べ
「そういえば、以前お渡しした薬は利用していますか?」
「……あ、ごめんなさい、実は、最初は飲んでたんですが、何ていうか、あの落ちるような感覚が、ちょっと怖くて…。」
なるほど、と考え込むルシスさんに、少し申し訳ない気持ちになった。折角私の事を考えて用意してくれたものを、私の勝手な判断で使わないのはやはり不味かったか、と黙り込んでしまったルシスさんを見て焦る。
「……夢は、見ないのですか?」
「あ、えっと、それが、あれから不思議と見てないんです。何でなのかは、分からないんですけど……。」
「なるほど、夢を見ないとなるとまた状況は変わってきますね。一度調べてみる必要がありそうだ。体調の変化などはありますか?」
「いえ、それも殆ど無いんです。」
「ふむ……申し訳ありませんが、今夜少しお邪魔してもよろしいですか?色々と確認したいことがございます。」
分かりました。そう言おうとして、あれ、と思わず聞き返した。
「えっと、今夜、ですか?」
「ええ。許されるのならば、今夜貴女が眠っている間、少しお邪魔させて頂けたらと。安心してください、睡眠を妨げるようなことは致しませんよ。」
それって、つまりルシスさんに見られながら眠るという事なのだろうか?恐る恐る聞くと、やはりそういう事らしい。
「すみません、やはり御嫌でしょうか?」
「え、えっと、嫌というか、何というか…その、緊張して眠られるかどうか…。」
正直、ルシスさんに見られていると考えるだけで、寝れるような気がしない。私は生憎、そこまでの図太い神経は持ち合わせていない、と思いたい。
「ふむ、確かにそれもそうですね。ではどうしましょうか。今回お呼びしたのも、そういった貴方の体調面といいますか、具合をしっかり確認したかったのもあるのですが……。」
「そ、そういう意味だったんですね。急におうちになんて呼ばれたので、ちょっとびっくりしたというか、緊張しちゃってたんです。」