第5章 闇夜の調べ
ハイデスさんからは、本当にまっすぐに伝えてくれるから、それはそれで恥ずかしさはあるが、喜びの方が勝る。
でも、ルシスさんは、何というかどこまでが本気でどこまでが冗談なのか、分からないのだ。きっと、からかわれているだけだということには変わらないのだろうが。
「でも、本当に不思議な子だ。私とこの距離に居て何も感じることが無いのはやはり天女の才なのでしょうかね。」
「な、何も感じないわけないじゃないですか、!ずっと、ドキドキしちゃってるのに……。」
何を言うのだと、思わずルシスさんを見て反論してしまった。この私のしどろもどろの状況を見て何も感じていないと仰るのか?!と。
だが、私の考えはどこか的外れなもののようで、そんな必死な私を見て、顔を手で覆っては肩を震わせて笑い出した。
「な、なんで笑うんですか!もう!」
「ッフ、フフ……失礼。いえ、本当に……可愛らしくて困る。これは帰したくなくなってしまいそうだ。」
「そ、それは……。」
「おや、振られてしまいましたかね。フフフ、残念です。」
頬を撫でられた後、そっと地面に降ろされた。
「さて、もうじき日が落ちます。寒くなりますので、中に入りましょう。」
そうして屋敷の中に戻った後、本当は、そこまで長く見て回るような予定では無かったのだが、私が無理を言って屋敷の中をもっと見せてもらうことにした。
だって、こんな絵本に出てくるようなお城の中を探検出来るなんて、思わずわくわくしちゃう。
部屋数はたぶん、クロヴィス家とあまり変わらないくらいだろうが、何というか建物全般が縦に長く、形も少し変わっているので新鮮だし、上まで来ると王城や城下町までもが一望出来るのだ。
普段使っていないという部屋は少し薄暗くて、それでもきちんと整えられているのだからすごい。
たまに廊下に飾られている絵画や、沢山の美術品はルシスさんの趣味で集めているのだそう。
凄く古そうなものから、華やかなものまで様々であったが、どれも品良く飾られていた。