第4章 3 夢か現か幻か
一気に血の気が引いていく感覚に膝を折りそうになるが、支えられながら何とか耐える。しかし、すぐにブワッと全身の血液が頭まで上っていくような感覚に襲われる。
震える手で薬を呷るが、噎せかえってそのまま吐き出す。身体を襲う熱に更に薬を掴んでは飲み込むが、身体がもう受け付けぬのだと逆流して無駄に終わる。
繰り返される嘔吐反射に抗えず焼けた喉を更に痛め付けていく。汗が吹き出るかと思えば、恐ろしい程の寒気に襲われた。
「…ウッ、ぁ"あっ……っ」
「、ハイデス様!それ以上飲まれては危険です!お止めください!!」
ジェイドの声がする。
上下も左右も最早分からぬこの脚で、進んだ先の机に上体を預けた。
アンリの魔力が、身体の中を巡り、私の魔力がそれを拒む中で、僅かにだが溶け合うものがあった。
彼女の魔力が、私の中に混ざっていく。
全身の肌が粟立つ感覚に息を飲んだ。
快感と呼ぶにはあまりにも苦しいそれは、私の中で確かな何かを壊していく。それが何なのか、理解するには私を襲う苦痛は激し過ぎて、どう足掻いても無理なことであった。
ただ、それは私を更に狂わせていくと同時に、自分でも訳が分からぬ位、彼女を求めて仕方がないのだということだけは、私自身に刻み込まれていった。
これ以上どうなろうかと言う程であるのに、気の狂うような快感に襲われる。
私が私でいられなくなっていく。
「ッ、ぁああ"あ"あっ、!!!!」
狂ったように凭れ掛かった机を殴っていた。
上に置かれていた何かが落ちてガシャンと砕けて床を汚す。
慌てたジェイドが鎮静魔法を掛けるが、そんなものが例え僅かでも効くのであればこの罪の歴史は幾分か変わっていたであろう。