第4章 3 夢か現か幻か
私自身も、絶対に身体にも、精神的にも疲れが出ているであろうということを言われ、数日間安静にしていたが、正直なところ私自身は実感がない。
私が目覚めた時にハイデスさんがあれ程までに心配したのには、理由があるんだ。
ジェイドさんに聞いても、曖昧な答えしか帰ってこないし、あの後ハイデスさんはお城に行ったっきり戻ってこれていないようだ。
あんな体調で、果たして大丈夫なのだろうか。
私はなるべくこの部屋にいて欲しいとのことで、昼食も部屋で食べ、食後の紅茶を飲んでいた時の事であった。あれから一度帰ったルシスさんがまた屋敷を訪れた。
「ご機嫌よう、アンリ嬢……どうですか?その後も特にお変わりはありませんか?」
「はい、私は何とも…。ハイデスさんは、留守なんです。何でも、お城に行くだとかで、帰ってこれて無いんです。」
「ええ、勿論承知ですよ。時間をもて余しているだろうと思い……よろしければ、私の屋敷へ招待しようかと思いましてね。ずっと籠りっぱなしも身体に良くないですし。」
ルシスさんの言葉に、後ろに控えていたジェイドさんが若干訝しげに目を細めた。
私はというと、悩んでいた。
ルシスさんのおうちなんてちょっと想像出来ないというか、どんな場所に住んでいるのか、かなり気になる。でも、ハイデスさん不在の時に例えルシスさんの誘いとは言え、勝手に出てしまうのは果たしてどうだろうか。行きたいかどうか、よりも、行っても良いのかどうなのか、と言う点で尻込みをする。
ましてやこんなタイミングだ。楽しくお出掛け日和とは言えないだろう。
何のために掛けた結界なのだと怒られてしまうかもしれない。
「とても行きたいです、けど……ハイデスさんに許可は取ってませんし…。」
悩む私に、ルシスさんが不意にジェイドさんに何やら耳打ちをすると、ほんの少しだけ、その瞳が銀縁の眼鏡の奥で見開いた。