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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か


こんなにも真っ直ぐ、真剣な眼差しをジェイドさんから向けられたのは初めてかもしれない。
もう、はらはらと零れ落ちる涙を止めることは出来なかった。

「、何か、私に、出来ることは……」

「…笑っていて下さい。是非とも、ハイデス様の隣で。」

「そんな、でも……っ」

気が付いたら、ジェイドさんの腕を掴んでいた。
ぶわりと、胸の中に一気に広がり襲う衝動にも近いこの感覚は不安なのか、恐怖なのか、今の私にはまだ分からなかった。

「ッ、、ハイデスさん、私を見なかった…!…っ、となりにいたのに!私の事を、見ようとも…しなかったの……っ、」

しゃくり上げる喉が、私の言葉を何度も遮ろうとしたが、止められなかった。明らかに、弱っているハイデスさんに対して、そんなことを言うのは間違っている。けれど、この不安を抱え込むのが恐ろしくて仕方がなかった。
私はじわじわと広がっていく先程の違和感を振り払いたくて、ハイデスさんより少しだけ細いその身体にすがっていた。

「、それ、は……その、…少し、少しだけ、待って差し上げて下さいませ。今はただ、時間が必要な時なので御座います。」

静かに、そっと抱き止めてくれるジェイドさんまでもが、苦しそうにそう言った。

「……アンリ様、どうか、ハイデス様のお心を疑わないでいて下さいませ。」

私はただその言葉を聞いて、ぐっと自分の感情を抑え込むので精一杯で、何を答えることも出来なかった。
でも、そうして私が落ち着くまでジェイドさんはそのままで居てくれたのだった。


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