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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か


部屋の中には、ハイデスさんとルシスさんの二人だけであった。ハイデスさんは拳を強く握り立ち尽くしていて、部屋へ入って来た私を見た途端、一瞬驚いた様な、酷く動揺した素振りを見せた。そうして、そのまま私から顔を逸らすと、ぐらりとその身体が傾いたのだ。
私は一瞬何が起きたのか分からなくて、床に膝を付いたハイデスさんの少し苦しそうな声を聞いた途端、無意識にハイデスさんの元へ駆け出していた。

「、ハイデスさん……!!」

否、そうしようとした。
けれども、叶わなかった。

目の前に、私の進路を塞ぐように立ったルシスさんが壁となり私の思いは届かなかった。
何で!?と、堪らずに抗議の視線をルシスさんに向けたが、彼は静かに首を横に振って、行くべきではないのだと、何処か不憫そうな表情で私を遮った。

「、大丈夫……っ、大丈夫だよ…。」

ハイデスさんは、少しよろめきながらゆっくりとソファへ移り、そしてそのまま組んだ手の上に頭を落とした。
ルシスさんに肩を抱かれながら、その様子を見ていた私は、どうすればいいのか分からなかった。
チラリとルシスさんの方を見ると、彼は少し悩んだ様子で、俯いたままのハイデスさんと私を交互に見た。
何か、思うところがあるのだろうが、そっと私の背を押すとルシスさんは私をハイデスさんの隣に座らせた。

おずおずと、此方を見ることもないハイデスさんの隣に座ると、にこやかな笑顔を向けるルシスさんが私達の向かい側に腰掛けた。

ハイデスさんは、ただ膝に腕を立て、下を向いたまま頭を抱えているだけであった。

こんなハイデスさんは初めてで、心配で、その顔を覗き込もうとした瞬間、ルシスさんに声をかけられ遮られた。

「アンリ孃、聞きなさい。もう、現状このままでは貴女を護り切れるとは言い難い状況になりました。少々、予定よりは早いですが来月には学園へ行きましょう。学期が始まるまでは少し時間がありますので、その間準備を進めながら、私が側におります。」

「来月、ですか…?、」
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