第4章 3 夢か現か幻か
色んな疑問が交差して、私は思わず、その声の方へと進んでいた。
次第に大きくなるその声は、それはもう、言い争うというよりも、一方的な怒鳴り声。
『……私が、…、!!』
『フフフ、面白い……、…お前の、…?…、どれ程…、…?』
『…誰が、くそっ!ルシス……貴様、私を……?!』
『おや、…、私は……、…彼女は果たして……。』
あまりの緊張感に、ごくりと唾を飲んだ。相手はルシスさんみたいだ。何を話しているのかまでは、よく聞き取れない。
分からないけど、もしかして、私の話…??
聞き耳を立てるのは悪い気がするが、もうここまで来てしまった。後戻りも出来ない状況と、この緊迫した空気の中私は自分の心臓が音を立てて騒ぐのをぎゅっと押さえ付ける事しか出来なくなる。
『…、…れ…』
『ぁあ、……、…でしょう?…、…。この世の、……』
『うるさい、ッ黙らないか!!』
思わずビクッと身体が跳ねるほどの大喝がし、同時にパシンッ!と何かが弾ける音がする。
「、きゃッ…!!、」
とても強い静電気が身体を流れたみたいな衝撃が走り、驚いて声をあげてしまった。
焦って口を塞ぐも、もう遅い。
先程まであれだけの怒鳴り声が響いていた廊下は、まるで嘘だったかのようにシン、と静まり返っていた。
ど、どうしようと固まっていると、すこし先の扉が静かに開いた。
「……っあ、ご、ごめんなさ…わたしっ、…あのっ…」
扉を開けたのはルシスさんだった。
思わずその場を離れようと背を向けた途端、まさか声を掛けられた。
「アンリ孃、お入りなさい。」
ピリリとした緊張感の中、そんなことを言われてしまえば勿論断るというか逃げるようなこと等出来る筈もない私は、おずおずと招かれる扉を潜った。