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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か


「一粒大体1時間、目覚める時間に合わせて量を調整出来るよう配分致しました。ただ、途中で目覚めることは難しいので、使用する際には充分お気をつけ下さい。」

「あ、ありがとう…御座います。」

受け取った瓶をまじまじと見詰める。
うーん、これを飲んだら意識が無くなるとは……万が一悪用されたら不味いから、大切にしておかないとな。
そう思ったが、別にここにはそんなことをする人なんて居ないと気が付いてベッドサイドにそのまま置いた。

「おおよそ、飲んでから15分程で効果があります。くれぐれも、飲むタイミングを間違えることの無いように。寒くなってきましたので、暖かくしてから眠って下さいね。」

そういうと、にこやかに会釈したルシスさんが部屋を出て行くのを見届けると、黙り込んでいたハイデスさんがやっと此方を見てくれた。

「……アンリ、何か飲み物でも持ってこようか。他に、必要なものはあるかい?」

「あの、私は大丈夫です、けど…ハイデスさん、何か、具合、悪いんですか?」

ハイデスさんの口数が少なく、視線を下げている時間があまりにも多い為に私は自分の事なんかよりもハイデスさんが心配になった。
すると一瞬、驚いたような顔をしたが、すぐにふわりとあのいつもの優しい笑顔を向けられた。

「私の事は気にしないで。大丈夫だよ。」

ハイデスさんの背を見ながら、パタンと閉じられた扉を確認すると、再びベッドに倒れ込んだ。

ぼんやりと考えるのは、あの、セラフィムの事。
彼は、王族どころか、人ではなかった。天使だった。
ショックという程、その天使というものについて私は知らないが、ただ、あの時街で襲われた魔物と同じだと思えなかった。

彼と話したことを思い出してしまう。
思えば彼は最初から最後まで、優しかった。
最後は、確かに怖かったけれども。
けど、あのすがるような瞳が脳裏に焼き付いて離れない。
ルシスさんから貰った薬があれば、もう夢も見なくなって、会うことがなければ私の中で、あの瞳もまた曖昧な記憶に埋もれてしまうのだろうか。

結構、何も分からないまま終わってしまった。
私の夢も、記憶も、分からないままだ。

そうしてぼんやりしていればハイデスさんが水差しを片手に戻ってきてくれた。グラスに入れられた水を受け取り、口に含むと自分が思っていたよりも水分を欲していたのだということに気が付く。
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