第4章 3 夢か現か幻か
「アンリ孃、目覚めたようで何よりです。どうです?身体の方は……」
「あ、ルシスさん……お陰さまで、大丈夫そうです。」
「ふむ、失礼…。」
額に手を当てられた。いつも、魔力の様子を確認する時に行う動作だ。
「そうですね。これならば暫くは問題なく過ごせるでしょう……多少の発作はあるかもしれませんが、差程問題にはならない程度の筈だ。」
そういうと、ルシスさんはハイデスさんの背中をポンと叩いた。私の手を取って俯いていたハイデスさんが、やっと顔を上げる。
その顔は、いつものハイデスさんじゃないみたいにやつれていて、その呼吸もどこか浅かった。
「さて、少々お伺いしますが、まだ奴の気配は感じますか?」
「、え……?」
ハイデスさんの様子が気になったが、思いも寄らない問い掛けに、咄嗟に窓からあの温室の方を見てしまった。
「えっと、気配とかは、よく分からないですが…、胸騒ぎが、します……。」
「なるほど、呼んでいるのでしょうね。……貴女が見るというの奴の夢の話ですがね、対策を考えてみたのですよ。だが、特定の夢を見ないようにするというのは中々難しく、代わりの夢を見させることはまぁ不可能では無いですが、かなり高度な技にはなってきます。そして毎晩貴女にその魔法を掛けるのも現実味がない。……そこでですね、少々荒っぽくはありますが、現時点ではこれを渡しておこうと思いましてね。」
そういうと、ルシスさんはマントの中からコトン、と小さな瓶を取り出した。
中にはいつもの薬より少し小さな飴玉サイズの玉が幾つも入っている。きっと、これも何かの薬なのだろう。
「これは、お薬…ですか?」
「ええ、その通りです。実は、失礼を承知で貴女が眠っている間に調べさせて頂きましたが、幸い貴女の身体は一定時間後の薬等の浄化作用が随分と高い。少々、強い薬なのですが、問題ないと判断し貴女へお渡し致します。」
「どんな、薬なんですか?」
「簡潔に言うなれば意識を失わせるものですね。」
「…、え」
それは、危ない薬なのでは…?と、思わずルシスさんを見たが、特に気にも止めない様子でにこりと笑い掛けられてしまった。
そして、言ったでしょう?強い薬だ、と。