第4章 3 夢か現か幻か
本当に、彼女の吐息が止まってしまったのかと思った。
一度捕食を行ってしまうと止められないだと?
そんな、意識すら無かったではないか。
私は、私自身が彼女に何をしてしまったのか、まだまともに理解すら出来ていないのだ。
こんなにも、恐ろしいものなのか。
震える腕で彼女を抱き締めようかと思ったが、瞬間的に心臓がドクンと跳ねて、その酷く淫らな姿にぶわりと身体中に熱が沸き上がる。
それは先程までの血の気の引いたそれとは全く違う、明らかな劣情と興奮であった。
バッと、咄嗟にその身を引いた。
ドクン、ドクンと高鳴るこの心臓を止められない。
急いでベッドサイドの薬を探したが、もう全てそれらは空になった空き瓶が無造作に散らばっているだけであった。
心臓の音が、響いているようだった。
何だ、これは。
自分でも信じられない程に、それこそ有り得ない程に熱を吐き出した筈のソコが、彼女を見ては首をもたげている。
そうして気が付く。
己の魔力量の変化に。
もう、変わることの無いと思っていたそれの、明らかな変化。
そして、目の前の彼女からは、以前のような、清んだ美しい魔力の気配を殆ど感じられない。
あぁ、あぁ、そうだ、そうであった。
これが、私と、彼女の未来。
この先、向き合わねばならぬもの。
私は、彼女から目を逸らしベッドからよろよろと降りると、そのまま冷えた床に座り込んだ。
この、酷く甘い濃厚な魔力に満たされた部屋で、ギリと音を立てる程に奥歯を噛み締めていた。
脳裏に先程の、彼女の奥からドロリと己の精液が流れ落ちる瞬間がフラッシュバックして、私の中心をみっともなくそそり勃たせた。
今、また彼女に少しでも触れようものなら、また我を忘れて彼女を襲ってしまいそうな自分に恐怖した。
それが、私は許せなくて、恐ろしくて、がむしゃらに自分自身に鎮静魔法を掛けた。
そのまま彼女を視界に入れぬまま、部屋全体に浄化魔法をかけて乱暴にガウンを掴むとふらふらとした足取りでこの部屋を出た。