第4章 3 夢か現か幻か
ガンガンと、頭の中で鐘が鳴っているかのようだ。
でも次第にそれが和らぐと、身体中を快楽の波が襲ってきた。
何だ、何が起きている。
訳が分からずにいると、急に霧が晴れたかのような感覚がして、良く見えなかった目の前がクリアになる。
そして、私はこの目の前の状況に頭が真っ白になった。
それもそうだ、私は、ぐったりと意識の無くなったアンリの腰を掴んで、己の陰茎を突き入れていたのだから。
焦って引き抜くと、ごぽりと音を立てるくらいの、恐らく私が出したであろう精液が彼女の中から溢れてくる。
「、…な、これは……」
私は一体、何をしてしまったのだと、そう言葉に出るその前に、私の頭の中に、つい先程までの記憶というには己の初めて目にするかのような時間達が駆け巡ってきた。
長い時間、気の狂う程の快楽から逃れようとする彼女を押さえ付け、己の欲望を一心に打ち付ける自分が、その記憶の中にいた。
それも、何度も、何度も、叫ぶ彼女の声など聞こえないとでもいうかのように。
「ッ、あ……、そん、な…私は…、」
ひゅっ、と喉が鳴った。
息を吸う筈が、これ以上は無理だと喉が押し返す。短い呼吸とも言えぬそれが私の脳を更に混乱状態に追い込んだ。
頭を抱えた。
そうして見下ろした、ぐったりとした彼女の顔が、青白く見えて、一瞬その呼吸が、吐息が、止まってしまっているのではないかという気さえして、全身の血の気が引いていくのを感じる。
「あ、アンリ、…アンリ……」
嘘だ、まさか、そんな筈は……。
愛しい彼女の、酷く、本当に酷く乱れたその姿に瞬きすら忘れ、視線を泳ぐように揺らし、その状況を確めた。
喉がカラカラに渇き、唇までも引きつって、呼吸の仕方をついには忘れてしまったかのようであった。
歯が、ガチガチと音を立てるのではというくらい、動揺して震える私は、その腕を伸ばし、彼女の頬に触れた。
柔らかな頬は、温かく、小さな吐息に胸が上下しているのを確認した。
はっきりと、彼女が眠ってしまっているだけなのだということを確認すると、止まっていた呼吸が急に喉を通り、ドッと汗が吹き出した。
身体の震えは止まらなかった。