第4章 3 夢か現か幻か
「違う、そんなことない……私が全部悪いのに、そうやって、私はハイデスさんに背負わせてしまう…」
「私がそうしたいんだ。そうさせて欲しいんだよ、アンリ。君の全てを支えたいと、そう思っているのに私が未熟故に君にそう思わせてしまう。支えきれていない証拠だ。……こうやって、君の前では綺麗事を並べ立てるのをやめられないのも。」
私は、アンリの溢れ落ちる涙をやっと拭った。
例え酷く歪んだ形であれ、彼女と私がこうして一つの床に収まる事が許されるということに、手が震えるかと思う程で。
「この想いを、君にぶつけてはならないと思っていたのに。こんな形で、君に触れるだなんて。アンリ……君は私を、受け入れてくれるだろうか。」
「ハイデス、さん?」
「きっと、私はもう君に一度触れたら自分を抑えることが出来ないだろう。だから、どうか今許しを請いたい……君の中に、私を受け入れて欲しいんだ。君の一番、深いところに。」
例え君が意識を失ったとしても、止められない己をどうか許してくれとまでは、言えなかった。
「、ぇ、あ……っ、」
言葉の意味を察してか、しどろもどろに視線を泳がしながら顔を耳まで赤く染める彼女が、愛おしくて仕方がなかった。同時に、堪らない欲望を今すぐにぶつけてしまいたくて、荒くなる息を抑えるのに必死であった。
「アンリ……。」
耳元で囁いた声は、驚く程甘い熱を持っていた。
「お願いだ、ただ一度、首を縦に降ってくれるだけでいい……どうか、君に触れさせておくれ、アンリ。」
まるで縋るようだと思った。
そうすると彼女は恥ずかしそうに、俯きながら小さくコクンと首を縦に振って見せた。
その瞬間、私は口許に笑みを浮かべるのを抑えることが出来なかった。堪らない感情、あまりにも幸福で、息を胸一杯吸い込むとぎゅっと締め付けられる感覚と共に喜びに溢れて胸が震えるようだった。
愛おしい、こんなにも愛おしい彼女に受け入れて貰えるということがこんなにも幸福なのか。