第4章 3 夢か現か幻か
彼女を強く抱き締めて、その衝動を抑え込む。
こんなにも小さく細い彼女は、私を受け止めることが出来るだろうかと不安が過る。
私は、彼女を壊さずにいられるのだろうか、と。
触れたくてたまらないのに、意識の定まらない彼女にこれ以上身勝手な行為を犯す己に耐えがたいと今更ながら息を詰まらせる。そんな自分に馬鹿げていると頭を抱えそうになった時、不意に彼女の腕が首に回った。
「、アンリ……?」
「…、ごめんなさい、ハイデスさん…」
何故、彼女が謝るのかとその表情を確かめた。
夢の狭間で意識が混乱してしまっているのかと思ったが、どうやらそうでもない。
その瞳には私をしっかりと写し、そして酷く揺れていた。
「ごめんなさい…どうしたらいいのか、ハイデスさん、私……」
「どうして……アンリ、謝らなければならないのは、私の方だというのに。」
今にも溢れ落ちてしまいそうな滴をその瞳に溜めて、彼女は震える腕で私にしがみつく。
そうして、だって、でも…と歯切れの悪い言葉を並べながら私を引き寄せるのだ。その熱い吐息が首に掛かるものだから、今にも理性が切れかかってしまいそうであったが、何とか奥歯を噛み締めた。しかし、まさかそれを更に彼女の方から煽るだなんて思っても見なかった。
私は、続いた言葉に一瞬頭が真っ白になった。
「ハイデスさん、私、もうおかしいの……ずっと、体が熱くて、触って欲しくて……助けて、欲しくて…」
咄嗟にゴクリと喉が鳴ると同時に気が付けば彼女を強く抱き締め返していた。そうすると、心臓が早鐘を打ちドッドッと大きな音を立てているのは自分だけではないのだと、お互いに気が付いた。それが更に二人の間の熱の籠ったこの緊張感を更に高めるのだ。