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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か



「何か、他に方法があるのか…?」

彼女を助けられる方法が、残されている。それだけで救われた気がした。
しかし、私は、続く言葉に目の前が真っ暗になった。

「手段は二つ。一つ目は、彼女を奴に明け渡す。二つ目はどうにかして彼女の魔力を身体から抜き取るしかない……彼女の魔力を、喰らうしかないのです、ハイデス。」

地獄の底、否、あえて天国とでも言おうか……絶望と幸福の狭間の、深い深い谷底に突き落とされた気分だった。

「正直、一つ目は論外です。よって、もう手段は一つしかない。やれますか?ハイデス……これは、彼女を助ける為の行為です。」

彼女を、助ける為だって?
何を言っているんだ、この男は。
理解が追い付かない。

「…、ほ、本気で、言っているのか…、?」

魔力を喰らうとは、命を喰らうということだ。
補食と呼ばれるその行為は、ただ命を奪うよりもその罪は重く、その後両者共に未来はない。
喰われた者は息耐え、喰らった者は正気ではいられない。
遠い、未だに切り開かれぬままの呪いの巣食う地へ飛ばされ、その欲望の捌け口を魔物を殺すことで宥めるしかいられなくなるという。

補食とは、何よりも幸福な、誓いを立てた相手と繋がるその行為と同じであり、そして真逆の意味を持つその行為に、人々は恐れ、そして夢を見た。

歴史上、悲しい死を遂げた魔力持ちの人間達は数え切れない程存在する。
そして、その魔力を喰らった人間も、同じだけ存在する。

「……今の彼女ならば、多少時間は掛かりますが、お前の肉体に吸収出来る量の魔力で済みます。彼女の肉体自体は、差程多くの魔力を溜められない身体をしています。勿論、それでも補助を加えてでの結果ですがね。お前が魔力に狂って死なないようにサポートは致しますよ、安心なさい。」

「、ちがう!そう言うことを言っているのではない!!き、貴様は……私に彼女を、手に掛けろと言うのか?!こんなにも、こんなにも愛した彼女を、この手で喰らえと、そう言っているのか…、?」

目眩がした。
嘘だと言ってくれ。

やめてくれ、そんな事を、私は望んでいたのではないのだ。

「何を言うのです。確かに、普通の人間ならば死を意味する行為ですが、彼女は天女です。死ぬ事などない。」
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