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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か


酷い男だと思うだろうか。彼女の漏れ出る魔力に当てられたのだと私の中の弱い意志が囁く。

私よりも一回り以上小さく、細く可憐なその手を掴むと、そっとベッドへ押さえつける。
どこか不安げに、彼女の瞳が小さく揺れた。

分かっている。分かっているのだ。
こんな事をしたところで、彼女の熱は治まらない。

彼女は、私を求めているわけではない。
あの化け物との夢が覚め切らないだけなのだ。

でも、それでも彼女が私の名を呼んでくれるのならば、触れることを許されるのならば、何度でも口付けて、その夢から覚めるまで私は彼女をこの腕の中に閉じ込めていたい。

何度奴との夢に犯されようと、今こうして彼女に触れることが出来るのは私なのだ。
過去の記憶など、何度でもこの手で塗り替えてやる。

いつしか私が、彼女のその記憶に深い爪痕を残せるまで。

あぁ、気が付かないうちに、私の中に渦巻いていく泥々としたグロテスクな感情に反吐が出そうだ。
でも、それを消すことが出来ない私は、その私の中に巣食う醜い劣情から目を逸らすことしか出来ない。
あぁ、今だって思う。この白い肌に、彼女は私のものだという証を刻み付けてしまえたならと。

熱で汗ばんだ首筋はしっとりと湿っていて、僅かな刺激でも傷を残してしまいそうだった。

ゆっくりと舌を這わせると、それだけで彼女はか細い嬌声を漏らす。
それだけで、ここ数日、彼女の甘い魔力に当てられていた私は、はち切れんばかりの熱を押さえられなくなる。
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