第4章 3 夢か現か幻か
「、ごめん、なさ…っ、」
「ああ、混乱しているんだね。ほら、おいで……部屋へ戻ろう。」
その少し角ばった指で私の涙を拭うと優しく私を抱き上げて部屋へと運んだ。
ベッドへ降ろされると、一つの小瓶を差し出された。
「今日はもう、君への体の負担が大きいからこれを飲んで。乱れた魔力を抑える為の少し強い薬だが、体への負担よりは軽い筈だ。」
少し甘くて、苦い。
薬っぽい匂いが鼻を抜けていくのを感じつつ、それを飲み干すと確かに体の熱がスっと収まっていくような感覚がした。
でも、触れて欲しい、この狂った感覚だけは治らなかった。
「、ありがとうございます……。」
「いいんだよ。アンリ、私に何か出来ることはあるかい?」
思わず、触れて欲しいんだと、そう求めそうになる。
そうしても、この感覚は治らないなんて分かっている。
「…、手を、握っていてくれませんか。」
「勿論。君が眠るまでここにいよう。」
きっと眠りについたらまたあの夢を見るのだろう。
可笑しくなる程の、快楽の幻想だけを覚えさせて、そうして何も満たされない体だけを置き去りにして私は朝を迎えるのだ。
怖かった。このまま朝が来ないで欲しいとすら思った。
「ねぇ、ハイデスさん……寝たくないの、眠るのが怖いの。」
「……大丈夫だよ、私がついている。ほら、君には私が居るよ、アンリ…安心して。」
ベッドに腰かけると、額にそっと口付けをくれる。
眠りたくなくて、必死に私はハイデスさんの方を見ていようとするのだけれども、優しく頭を撫でられては何時しかその残酷な優しさに包まれて、夢の中へと落ちていった。
そうして私は、この日、本当の意味で、彼と繋がったその夢を見た。