第4章 3 夢か現か幻か
とにかく熱くてつらいこの体をどうにかしたくて、部屋を出た。ベッドサイドの呼び鈴を鳴らすこともなく、暗くなった廊下を一人で歩いていた。
気が付けば、あの温室が見えるテラスまで来ている。
薄暗くてよく見えないが、あの場所に行けばまた彼に会えると思うとそれだけで体が疼いてしまう気さえした。
ダメだと、考えてはいけないと思って背を向ける。ひんやりした空気が頬を撫でた。
壁に凭れ掛かり、そのままずるずると座り込む。
ワンピースの裾が床を擦るのも気にせずに、私は膝を抱えた。
私は一体どうしてしまったのだろう。
何と言えばいいのかわからないこの感情の逃げ道を探していた。
そうして、蹲っていて、目の前に現れた人影に気が付いたのは、直接声を掛けられてからだった。
「、アンリ…こんなところにいたのか。」
ゆっくりと顔を上げてその声の主を確認した。勿論、そんなことをしなくとも分かっていたのだが、そうしないと今の私はこれが現実なのか夢なのか、分からなくなってしまいそうだったから。
「、…ハイデス、さん、」
「きちんと眠れているか気になったから、部屋へ様子を見に行ってたら居なかったから心配したよ。今朝の事もあったから…ほら、そんな恰好では風邪を引いてしまう。」
膝を着いて、心配そうに私の事を確認するハイデスさんはごく自然の動作で自分の上着を私にかけた。
しかしその頬に触れた手が、とても冷たくて随分と長い間私の事を探させてしまったのが分かる。
思わず、ぽろぽろと頬を伝って零れ落ちるものがあった。