第4章 3 夢か現か幻か
「、これは、何だ??何故こんなにも魔力が乱れている…??おい、ジェイド!何故もっと早くに言わない?!」
「ハイデス様、落ち着いて下さい。ここまで酷くなったのはつい先程です。昨夜、ハイデス様へお伝えした時には乱れという程のものでもありませんでしたし、今朝は通常の体調不良と思われるものでした。」
「そうか……詳しいことは後で聞く。ジェイド、すまないが、暫くアンリを診なければいけない……人払いを。」
「…畏まりました。」
静かに部屋を出るジェイドさんを見送れば、部屋にはまだぼんやりとしている私と、酷く不安そうなハイデスさんの二人になった。
「アンリ、いつからだい?こんなにも魔力が乱れるまで、発作を我慢していたのかい…?」
発作と聞いて、急にこの熱がそういうものだという意識が芽生えてしまった。
そんな、違うのに。これは、そういうのじゃないと思っていたのに。
だって、彼といる間…否、彼の、セラフィムの事を考えている間、私はずっとこの熱を感じていたのだから。
「まだ、良く分かっていないんだろうが……ダメじゃないか、異変を感じたらすぐに伝えないと。ほら…」
口付けをされた。
一気に私の中に何かが流れ込んでくる。
これ、セラフィムにされたのと同じ…。
それは魔力を飲まされている感覚だった。
でも、不思議と今は熱っぽさが少し和らいでくるのが分かった。
「んっ、…ぅ…っ」
久しぶりの、ハイデスさんの体温、香り、口付け…。
頭の奥の方にビリッと電流が走った。
ハイデスさんの胸をとっさ押して拒絶しそうになる感覚と、安堵と喜びに咽び泣きそうな私が私の中で今混在している。
何で、私…どうしちゃったの?
一度離されて、混乱した意識でもう大丈夫だと言っても、そんな筈無いと言うハイデスさんは、その大きな手で私の顎を押さえられると先程よりも深い口付けをした。
不意に、涙が出た。
何の涙かなんて分からない。分からないが、気持ちがぐちゃぐちゃだった。
ハイデスさんの魔力が、私の中に流れ込んでくる感覚が止まらない。
その度に、頭の奥にビリビリと電流が走って、私の気持ちをぐちゃぐちゃにしていく。
少しだけ荒っぽくて、でも深くて甘い口付け。