第4章 3 夢か現か幻か
物凄く優しい動きで、ベッドへと下ろされる。
ぼんやりと流れる景色を見ていたら、先程までの頭痛も段々と良くなってきた。
「お嬢様……酷い魔力の乱れを感じますので、此方を飲んで頂きたいのですが…。」
いつもの薬だったが、あれを今噛み砕ける気がしなかった。
少し戸惑っていると、小さな水差しにパキン、と割って液状にしてくれた。
ふらつく身体を支えられながら、口元まで持ってきてくれたそれを少しづつ飲んだが、いつもより飲みにくい。何が違うのか分からないが、まるで身体が拒否するみたいだ。
途中噎せてしまって背をさすられる。
あぁ、これでは完全に病人だ。
どこも悪い筈はないのに、こんなに心配させて本当に申し訳なくなる。
「、ごめんなさい…ジェイドさん、」
「何を仰いますか。私の事など気にせず、お嬢様は御自身の心配をなさって下さらないと。」
ジェイドさんまで辛そうな顔をするから、本当につらくなってくる。
ゆっくりと寝かされて、布団を掛けられるのだが、身体が熱くて何だか可笑しい。頭がぼーっとして何も考えられないみたいだ。
一瞬、あの発作かと思ったが違う。熱っぽくてそういうのではない、けど、何故だろう……無性に落ち着かないのだ。
「……、治まりませんね。お嬢様、裏庭での事は覚えていらっしゃいますか…?何があったのですか?」
何の、話だったっけと熱に浮かされた頭で考えるも何も出てこない。
あれ?あれ?と何も考えられない頭でうんうん唸っていると、不意に扉が開いた。
「アンリ!」
「、ハイデス、さん……?」
突然の来訪に私も、そしてジェイドさんも驚いた様子だ。
あぁ、物凄く久しぶりにその声を聞いた気がした。
「君の調子が良くないと聞いて駆け付けたんだ。すまない、ずっと留守にしていて……大丈夫かい?どこが悪い?」
「、わかん、ない……」
私のために駆け付けてくれたんだということは分かったが、今の私には満足する答えは何もなかった。
その様子に焦りを見せ、ハイデスさんは確かめる様に私の額に手を当てて魔力を調べる動作をすると、更にその表情を強ばらせた。