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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か




「アンリ、嬉しい……来てくれたんだ。」

あぁ、夢なんかよりずっといい。
彼の気持ちが伝わってくる。

この、好きで堪らない想いが。

「フフフ、どうしちゃったの?……今日は甘えん坊さんだね?もしかして、寂しかった…?」

まだどこかぼんやりする意識で、気が付けば自分から彼に抱き付いていた。

「ほら、もっと僕にその可愛い姿を見せて…?その声を聞かせて?」

「あ……セラ、フィム…。」

目が逸らせない。
吸い込まれてしまいそう。
このまま、彼に奪われてしまいたいとすら思えた。

「ねぇ、あの……もっと、ぎゅって、して。」

可笑しかった。
何でそんなことを言っているのか、そんなことも分からなかった。
ただ、彼を求めてしまう。

「フフ、そんなに可愛いこと言っちゃって……僕、昨日我慢してるから、何しちゃうか分かんないよ?」

「いいの、いいの……セラフィム、ちょうだい…。」

「……嗚呼、いい子だね、アンリ…。」

目を細めて、嬉しそうにする彼から、優しくて甘い感情の他に、少し暗くて泥々としたそれを感じた。
まるで獲物が自分から罠に掛かりに来るのを待つかのような興奮を。

少しだけ怖くなって、彼を見ると優しく口付けされる。
私の中に心地いい何かが広がると、その恐怖もすぐに喜びに変わった。

舌が絡み合って、口付けが深くなると身体の疼きがどんどん強くなる。
夢で彼に触れられたところが、特に疼いて、触って欲しくて切なくなる。
でも、気持ちよくて、その切なさが堪らなくて、彼を見ると私を見るギラギラした目が愛おしげに細められた。

「ねぇ、アンリ……今、自分がどんな顔してるか、分かってる?」

「、わかん、ない……。」

「……フフ、もう欲しくてたまらないって顔。可愛い、本当に…。」

耳元で囁かれて、ドキッとした。
顔が耳まで一気に赤くなったような、そんな感覚。

「、そん、なこと……っ」

急に恥ずかしくなってきて、否定したくて顔を逸らそうとするも、頬を抑えられてしまってまるで逃がさないとでもいうように、その彼の瞳が私を真っすぐに捉えていた。
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