第4章 3 夢か現か幻か
屋敷に戻り、午後のジェイドさんとの勉強時間と、夕食を終えて部屋に戻る。
一人になると、まだどことなく意識がぼんやりする。疲れてるのかもしれない、今日は早めに寝よう。
そう思って、暖かな湯船に香りのいいバスボムを入れる。
透明な薄いボールの中に、優しいピンク色をした液体が入っているのを手で割るタイプだ。
パキン、と音を立てて割れると、まわりの殻はサラサラと溶けて無くなった。
少しだけ甘い、リラックスする香り。
「……ふぅ。」
暖かくて気持ちがいい。
ほんのりお湯にとろみが出て、強めの軟水のような肌触りのお湯になる。
夢じゃ、無かったんだな。
気が付けば、セラフィムの事を考えていた。
彼に着いていけば、私は知らなかった過去と自分を知ることが出来るのだろう。
でも、ハイデスさん達と会えなくなる可能性が高い…。
我が儘だとは分かっているけれど、過去の自分は知りたいし、ハイデスさんと会えなくなるのは嫌だ。
何とかならないのかな…。
チャプ、と湯船に深めに浸かって揺蕩う水面を見詰めた。
彼は、私の見てた夢は、夢じゃなくて記憶だと言っていた。
なら、今まで見てた夢は全部本当にあったものなのかな。そう考えて、今までの夢を思い出すと急に恥ずかしくなる。
結構、彼とのいやらしい夢を見てしまっていた気がする…。
私と彼は、とても深い仲だと言っていたし…キスも、触れられる事も、嫌じゃない私がいた。
ということは、私と彼は恋人同士だった?
彼を好きだった時の私がいて、彼も私の事をそう思っていて……お互いを深く求めるということは、そういうことなのだろうか…。
過去の私は、一体どんな風に彼を求めたの?
夢の中の彼と、今日私にキスをした彼が、頭の中で重なる。
「、……なに、考えてるの、」