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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か


「……あ、えっと…、私…」

「フフフ、言わなくても大丈夫。ゆっくりで良いから、ひとつひとつ教えてあげるからね。」

そう言う彼に近くにあったベンチへ誘われる。
そうだ、この人私の考えが読めるんだ。
何故かは分からないけれど、魔力が強い人はそうなのかな。
でも魔力が強いと言っても、あのルシスさんでさえそういう感じはしなかったけれど。

「……ねぇ、ダメだよ。僕に会いに来てくれたんでしょう?だからほら、こっち向いて、僕の目を見て?」

「え、……ぁ…、」

考え事をして、少し俯いてしまっていたのが、気が付けば彼の言葉通り、彼の方を見てしまう。
相変わらず、吸い込まれそうな程に綺麗な空色の瞳。

その瞳を見ていると、何を考えていたのか、分からなくなってしまいそうだった。

「僕と君はとっても深い関係だったんだよ。心も…身体もね。本当の意味で愛し合っていたんだ。」

「本当の、意味、で…?」

「そうだよ。深く深く、お互いを求めるとね、本当に幸せな気持ちになれるんだよ。だから、アンリが居なくなって本当に辛かった。気が狂いそうだった……ねぇ、また君を抱き締めていい?」

彼の瞳から、目が逸らせない。心臓は酷く高鳴って、身体が熱くなってくるのを感じる。発作みたいな不快感はないけれど、胸の奥が切なくてたまらなかった。
だから、私は彼の言葉を断れなかった。

「あぁ、夢みたいだ。また、君をこの腕で抱き締めることが出来るだなんて。アンリ、アンリ……可愛い僕のアンリ。」

彼の声で名前を呼ばれると切なくて、でも嬉しくて、この感情にどうすれば良いのか分からなかった。
この前は、あんなに怖かったのに、今は彼と話せていることが、抱き締められていることが嬉しくて堪らない。

「ねぇ、そんなに可愛い顔してると、キスしちゃうよ?いいの?」

熱が出たみたいに、ぼんやりして抵抗も出来ない。
断らなくてはいけないのに、何も言えなくて、心は嬉しくて仕方ないといった様子で鼓動を早くする。
そうしているうちに、触れるだけのキスをされた。

「フフフ、ごめんね……あんまりに可愛いから、しちゃった。嫌だった?」

嫌じゃ、無かった。
寧ろ、もっとして欲しいとすら思ってしまった。
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