第4章 3 夢か現か幻か
考え込めば考え込む程に、頭が痛くなってくる。
でも私は、私の過去を知りたい。
もう一度彼と話せれば、分かるのかな。
やはり痛む頭を抱えて、ジェイドさんに心配されながら部屋を出る。
私の部屋まで送るという言葉を断って、ゆっくり廊下を歩いた。
やっぱり私は、私の事が知りたい。
誰も見ていないのを確認して、静かに外に出た。
まだお昼過ぎ、みんな仕事してるので誰にも会わないようにこっそりと庭を進む。
変わらずに、あの日と同じ場所に温室はあった。
何故か辺りは急にぼんやりと霧がかっていて、温室の扉も開いている。
もう、居る筈がない。
あれが夢だったのなら、それまでだ。
でも、もしまた彼に出会えたら?
彼がここに居たとしたら、知りたいことが山程ある。
心臓がバクバクした。
いる筈が無いと、そう思っていても、一歩足を踏み入れれば確信した。
彼は、ここにいる。
寂れた石畳の道に、光が反射してキラキラ輝くこの空間は、明らかに外と何かが変わっていた。
ゆっくり、ゆっくりこの前と同じ道を進んでいく。
するとやはり、そこに彼は居たのだ。
一人静かに佇んで、気が付いたかのように振り返るとあの甘い笑顔を私に向けた。
「あぁ……来てくれたんだね、アンリ。」
恐る恐る、慎重に彼に近付いていった。
夢ではなかった、その人が何なのか。
私は何なのか、知らなければいけない。
「この前は驚かせちゃってごめんね……僕、本当に嬉しくて、嬉しくて。本当に、ずっと君を探していたから…。でも、君は僕を覚えていないんだから、急にあんなこと言ったら怖いよね。」
ごめんね
本当に、辛そうな表情で謝る彼に、どうしたらいいか戸惑ってしまう。
「怖がらせるなんて、最低だよね。だからお願い、僕に君ともう一度話すチャンスを頂戴?」
「……、今日は、知りたくて来たの……ねぇ、教えて。貴方は私を知っているの?」
「そうだよ。君の事なら僕はなーんでも知ってるよ。何から聞きたい?なんでも聞いて?君が僕を思い出してくれるなら、僕はなんだってするよ。」
私と貴方は、どういう関係だったの?
貴方は誰なの?
何故、こんな場所でしか会えないの?
今も、私が来るのを待っていたの?
私は何者だったの?
私が天女だということは、貴方も知っているの?
聞きたいこと、知りたいことが一気に押し寄せてくる。