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私を愛したモノなど

第4章 3 夢か現か幻か


「、ここって……ハイデスさんが言ってた。」

あまりにも幻想的で美しく、そしてそれ故に薄気味悪さがあった。
外から呼んでも、出てくる気配なんて無い。

仕方無いと、一歩足を踏み入れる。

そこは手をつけていないという割には整っていて、人が通るには充分な道があった。
ステンドグラスの様々な色の光が降り注いで、本当に幻想的だ。外の様子は霧が濃いからか、白くぼやけて良く見えない。

「……ユフィー、?どこ行っちゃったの…?」

生い茂る樹木の隙間から奥の様子を見ようとするが、良く分からない。
使われていない古いベンチと、水の止まった水瓶。
大理石の彫刻は少し色がくすんでしまっている。

一歩一歩、歩く度に不思議と息が上がってくる。
鼓動が早まり、嫌な寒気が強くなっていった。

曲がりくねった道を抜けると、急に開けた空間に出た。

そして、そこで……私は見た、その光景に、脚が震え、動けなくなる。


キラキラと、光が輝くその空間で、楽しそうにくるくる宙を舞って見せるユフィー。
そして、その下で、穏やかになだめて見せる、その人がいた。

腕の中へユフィーを優しく抱くと、ゆっくりと此方を振り替える。

ドクン、と心臓が跳ねて、喉はカラカラに乾き、瞬きすら出来ないぐらいに身体は硬直している。

サラサラの金の髪、鮮やかな空色の瞳、透き通るような白い肌に、甘く優しい、あまりにも綺麗なその笑顔。


「遅くなってごめんね……約束通り、迎えに来たよ、アンリ。」


この宝石のような空間で、それ以上に輝いて見えるその人は、私の夢の中とまったく同じ声で、私の名前を呼んだ。

「な、んで……私の、名前…」

カラカラの声で、やっと出た言葉がそれだった。

「……え、アンリ?どうしたの…?僕のこと、覚えてないの?」

誰?だれ?ダレ?

知ってるけど、知らない。
思い出そうとすればする程、頭がガンガンする。

「おかしい、もう、全部思い出していていい筈なのに……。」

「何度も、夢で、見た……人、」

怪訝そうに考え込むその人。
仕草も、声も、何もかもが夢の中で見たその人で、それ以上に訳の分からない懐かしさのような感覚に私は襲われた。
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