第4章 3 夢か現か幻か
最近、ジェイドさんから学園へ行くための勉強を教わっている時間が長くなった為、ユフィーと遊んであげる時間が短くなっていた。
だからなのか、この日は中々言うことを聞かなかった。
「明日遊んであげるから、戻ろう?」
「…、キュー!」
プイ、と私に背を向けて飛んでいってしまう。
「あ、まって!」
最近、飛ぶことを覚えてから行動範囲が格段に増えた。
あまり羽ばたいてないのに空中に浮く身体は魔力の高い証。
どこへでも行ってしまいそうで少し怖かった。
急いで後を追うが、全然追い付かない。
噴水のある中庭を抜け、もっと奥へと進んでいく。
外になんて出るつもり無かったから、薄い部屋着一枚で来てしまった。
前よりずっと風が冷たい。
空の光が青白くて、いつもより霧が深く世界がぼんやりとしていた。
「お願い待って、ユフィー、行かないで!」
知ってる場所、もうずっとここに住んでいる筈なのに、何だか空気がとても怖くて、とにかく早く戻りたかった。
ユフィーを追いかける程、ざわざわとした寒気が強くなる。
私のそんな気持ちも知らぬ子は、楽しそうに、くるん、くるんと宙を舞ってこの不思議な空間を楽しんでいるようだった。
そして不意に何かを感じたかのように止まって、キョロキョロと辺りを見回し、急に方向を変える。
「こ、こら、ダメだって…、!」
さすがに焦った。
これ以上は私も行ったことの無い場所だ。
裏庭のもっと奥、そこには、入ってはいけないと言われていた古い温室があった。
淡い光に照らされて、キラキラと輝くそれは霧の中に突然浮かび上がる宝石箱のようだった。
迷うこと無く、そこへと向かっていくユフィー。
何故か開いている扉。
キラキラ輝く宝石のような子竜は、吸い込まれるようにその中へと入ってしまった。