第4章 3 夢か現か幻か
声が、する。
あぁ、またあの夢だ。
夢なのに、これが夢だと思うのは何度もこの光景を見ているからか。
金の髪に空色の瞳、私を呼ぶ、その声。
幾度と無く私の前に現れて、ぼんやりとした霧の中で私を呼び、愛を囁き、触れて、そして消える。
今日も彼は私の夢の中で、おいで、おいでとあの優しい声で私を呼ぶのだ。こっちだよ、もっとこっちだと、声はするのに姿が見えなくて、私は必死に森の中を探している。
気配と声だけ、今日の彼はその姿を見せない。
貴方は誰なの、何故、私の夢の中に現れるの、と、それが知りたくて、私は彼を追いかける。
深く繁った森の中、森にしてはあまりにも明るくて、樹木が時に白く時にクリスタルのようで、キラキラ輝いて眩しい。
強い光の中から私を呼ぶ声が、次第に大きくなっていく。
もう少し、もう少しだと先に進んだこの先で、私は強い光に包まれた。
瞬間、強く腕を掴まれた感覚。
そのままグッと引っ張られ、目の前には、今まで見えなかった、その彼の顔が鮮明に写った。
霧の中いた彼が、今目の前で、はっきりと私の前に姿を表した。
サラサラと落ちる柔らかな金の髪、透き通るような空色の瞳。
私は、この人を、知っている。
吸い込まれる程鮮やかな空色の瞳の中には、確かに私が写っていた。まるでその中へ囚われているかのように。
「あぁ、……やっと見付けた。」
嬉しそうに、それはもう嬉しそうな笑顔が、私の知らない記憶の中で、幾度と見たそれと一致した。