第3章 2 暖かな黒の中で
「大丈夫、誰も来やしないさ。……実はまた、明日の朝からしばらく戻らなくなる。」
「…え、また、ですか…?」
「あぁ、すまない…。だから、少しでも君の側にいたくて…そう思うと、分かっているんだが、止められないんだ。」
この人を拒めなくなるのは、私を強く抱き締めるこの腕のせいか、優しく啄むような口付けと甘いテノールが私の判断を鈍らせるせいか。
「ハイデスさんは、ズルいです……そんなこと言って、拒めなくなっちゃうじゃないですか…。」
「そうだな、すまない……全て私のせいだ。君はきちんと拒んだが、私が無理を強いたんだ。だから、これも…全て私のせいにしておくれ。」
耳元で囁かれて、胸元のワンピースのボタンを一つ一つ外されていく。ビックリしてやめさせようとしたが、間に合わない。
「や、まって…、それはダメ…!」
私の制止を聞かず、器用に私の服を乱していく。気が付けば胸元ははだけ、はしたなく下着を晒してしまっている。
窓の外はまだまだ明るく、時折人の声や生活音も遠くから聞こえていて、それがまたこの状況の緊張感を高めた。
「ハイデスさん、こんなところで…やぁ……」
下着すらもずらされて、完全に胸元が空気に触れた。
「あぁ、恥ずかしそうに私を拒む君もまた魅力的だ……。」
胸元へ触れる舌先が、ゆっくりと滑ってその頂点を目指す。
ドキドキして、ダメなのにこの手は両方ともハイデスさんに掴まれてしまってどうすることも出来ない。
また、流されてしまう。
でもこれはハイデスさんのせいだから…逃げたくても逃げられない、こんな状況なのだからと、自分に言い訳をしてまたハイデスさんに流されている。
ズルい、こんなのズル過ぎる。
「あぁ、可愛いアンリ……こんな私で、すまない。」
本当に、ズルい。
「、ァッ……や、ぁ…」
もう既にぷくりと膨れた胸の突起を、ぱくりと口の中に含み、そのままゆっくりと舌で転がして先端を小さく擦られた。擽ったいような、もどかしい快感が全身に広がっていく。
気が付けば求められるのが嬉しくなっていた。
こうして、切なくなるような想いをぶつけられながら求められ、触れられるのに堪らない幸福感を覚えていく。
答えられないその気持ちに、答えなくても構わないと言われ、ただその想いを受け止める。
ハイデスさんの気持ちに、言葉に、甘えていた。