第3章 2 暖かな黒の中で
ギュッと抱き締められながら、段々と深く濃くなっていくそれを必死に受け入れていると、不意に扉を叩く音がした。
「おはよう御座います、ハイデス様。…、おや?」
その声の主に一気に目が覚めた。
「、…ジェイド、今日はまだ来なくて良いぞ。」
「失礼、ハイデス様?……貴方、御自身が何をしているか、理解しておいでですか?」
ひぇっ…
ちょっと今まで聞いたこと無いくらいに冷たい声。
これは、怒ってらっしゃる…?
「理解、理解か……そうだな、今噛み締めているところだ。」
「っ、この方は、全く……はぁ、今は敢えて何も伺いません。なのでさっさと湯浴びをして来て下さいませ。本日は大切な会合があるのをお忘れで?」
「今日だったか……なんてタイミングの悪い。」
「ほら、御託は良いからさっさとそこを退いて下さいませ。……お嬢様は、どうかそのままで。」
然り気無く、私に触れるだけの口付けをした後に渋々ベッドを出ていったハイデスさん。
一人残された私は、めちゃめちゃ緊張してジェイドさんの目を見れない。
それに私は今薄いワンピースの部屋着一枚だ。来る時に羽織っていたものは側にはない。
こんな格好でジェイドさんの前に出るのはさすがに出来なかった。勿論、ハイデスさんならいいとか、そう言うわけでもない。
「…あの、ご、ごめんなさい……」
「何故、お嬢様が謝られるのですか?」
「いや、その…私が昨日眠れなくて、部屋を出ていて…ハイデスさんが部屋でホットミルクでも、と…」
「……ホットミルク、ですか。…、なるほど。これは、そういうことですね。」
昨夜の飲みかけのホットミルクが入ったカップを手に、静かに睨み付けるジェイドさん。
丁度戻ってきたハイデスさんが、それを見て固まった。
「ハイデス様?今度、私がきちんとしたホットミルクの作り方を教えて差し上げましょう。……混じり物の無い、ホットミルクの作り方を、ね??」
完全にキレてるジェイドさんの顔を初めて見た。
状況の理解出来ていない私はひたすらにおろおろする。
「あ、いや……ジェイド、それは……その…」