第3章 2 暖かな黒の中で
何だか擽ったくて、小さく身動ぎすると大きな手が私の頭を撫でる。
まだ眠っていたいような、早く目覚めてその手を確かめたいような、そんな気持ちがする。
心地好くて、暖かい。微睡みの中で暫くそうしていた気がする。
頬と、耳元へ何度も小さく口付けられるような感覚がして、それが擽ったくて、でも心地好くて。
うっすらと目を開けると、あまりにも優しげに私を見る黒の瞳と目があった。
「すまない、起こしてしまったね……おはよう、アンリ。」
今度は、唇に触れるだけのキスをされた。
あれ、なんでハイデスさんがいるんだろう?
私、ハイデスさんと寝ちゃってたのかな…?
なんて寝惚けた頭で考えていたら、段々と昨夜の事を思い出した。
昨日、ハイデスさんとめちゃめちゃそういうことしちゃってたよね。発作があったわけでも、何でもなかったのに。
ど、どうしよう…いや、でも本番までしてない、…ん??最後まではしてないよね??
頭の中がグルグルしてきたところで急に抱き締められ、目の前がハイデスさんでいっぱいになった。
「昨夜は、その……すまない。君への想いが抑えられなくなってしまって、あんなことをして…。私は、嫌われてしまっただろうか。」
「えっ、いや……嫌いになんて、ならないです…私こそ、みっともない姿を見せてしまって…。」
「君が?まさか…、最初から最後まで、ずっと可愛らしかったよ。勿論、今もね……あぁ、君に嫌われていなくて良かった。……可愛い、好きだよ、アンリ。」
ちゅ、ちゅ、とまた何度も口付けられる。
寝起きの、セットされていない無防備な髪型のハイデスさんは初めて見た気がする。
声もまだどこか少し甘くまろやかで、相変わらずの甘い台詞にクラクラした。
「あぁ、アンリ、本当に可愛い……目が覚めて、君が私の腕の中にいた時の、その喜びが分かるかい?こんなにも幸福な朝を迎えられたのは初めてだよ。」
額から目元まで、愛おしげに触れられる唇に擽ったさを感じながらまだ少し寝惚けた頭が、耳にした言葉達にまた溶かされてしまう。
そうして唇へ戻るとゆっくりと深い口付けに変わる。