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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


「あ、あの…ルシスさん、なんで…」

「何故か?そうですね、少し意地悪をしたくなりました。…というのは冗談で、今はこうした方が良いだろうと思いましてね。」

どういうこと?と聞こうとすると、ドクン、とあの感覚がした。

「ッ、ぇ…、うそ、やだっ、」

思考がぐるぐるする。
何故今なのかとか、あまりに良すぎるタイミングに思わず私を抱き締める腕から逃れようとするが、叶わない。
それどころか、上手く立ってすらいられなかった。

「落ち着いて…大丈夫ですから。ほら、此方を向いて。」

火照る身体に力の入らない脚、心臓は段々と音を立てて騒ぎ出す。

状況を受け入れられない気持ちに、訳も分からず泣き出しそうになる私を抱き締めて、ルシスさんは少し強引なキスをした。

熱い舌が私の唇を割って入り込み、絡んでは纏わり付くその感覚が気持ち良くてぞくぞくと背筋が震えるようだった。
ザア、と風が二人の熱を奪っていく。そうしてここがバルコニーで、今は夜会の最中なのだと言うことを思い出させた。

「ふ、ぁ…っ、だめ……ルシス、さん…こんなところ」

「…問題ありません。誰も居ないように見えていますから…。」

何度も何度も角度を変え、行われる深い口付けにクラクラした。舌が擦れる度、身体の奥がぎゅっと切なくなるような、それでいて心地良い、堪らない感覚に襲われる。
これはこの熱を治めるため…そう自分に思い込ませても、このあまりに深い口付けに、ルシスさんを意識せずにはいられない。うっすらと開いた瞳の奥のその深い闇に、このまま飲み込まれてしまうのではないかという気さえした。

もう熱も収まって、これ以上はという所でゆっくりと身体を放された。

「あぁ、これ以上は逆に熱が上がってしまいますね。残念ですが、この場ではここまでです。また発作が出たら次はハイデスに言うといい。」

そう言いながら、落ち着くまで待ってくれていたらハイデスさんが迎えに来た。
どこかまだ意識がぼんやりしている私は、ルシスさんへ満足に今日のお礼を伝える事もままならないまま、ハイデスさんの馬車で帰ることになった。
ハイデスさんにはかなり心配させてしまったみたいで申し訳ないが、さっきまでルシスさんにされていたことを思うとハイデスさんの顔をちゃんと見れなかった。
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