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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


すごい人っているんだなぁ…そう考えていて、ふと一つの疑問が浮かんだ。ルシスさんは、どうなんだろう??

ハイデスさんやジェイドさんの話を聞く限り、化け物だとか数千年は軽く生きてるだとか、何だか怖い話ばかり聞くけれど、実際のところ、どうなんだろう?

「あの、ルシスさんは……その中に含まれているんですか?」

「おや、これはまた鋭い質問ですねぇ。フフフ、それを言うならアンリ、貴女もその中に含めなければならなくなりますかね…。」

…え、私?
何、どういうこと?と思ってると腕を掴んで抱き寄せられた。

「ほら、そんなことを話しているうちに、始まってしまいますよ?準備の方は宜しいですか?」

「ひゃ、……る、ルシスさん…近い…」

「当たり前でしょう?貴女を独占出来るまたとない機会です…ほら、もう気配を抑える術も解き始めていますから、私の腕の中で存分に輝いて下さい。」

待ってとか、何だとか言うまもなく滑るようにホール中央へ誘われて、一気にきらびやかなライトと、人々の視線を受けた。

勿論、同じタイミングで大勢のペアが美しく舞う。



彼らは皆、思い思いのドレスを身に纏い、男性も女性も、本当に鮮やかだった。目が眩む程鮮やかな者、もっと明るく華やかな者…それはまるでフラワーシャワーのような美しさでこのホールを飾り立てる。
身に付けた宝石や、ドレスに縫い込まれたビジューまでもがその者と家を、力を魅せる為誰よりも強く輝こうとしていた。


力強く、艶やかな魅力に包まれた彼等が踊る、そんな中で私達は異質であった。

唯一と言えるほど真っ黒な燕尾に、軽く纏められた先からは同じように黒く艶のある髪をなびかせる。
そして、その腕の中ではあまりにも対照的に、故に一際目を引くシルバーグレーのドレスがキラキラと反射する魔法灯の下、時に白く、時に青く、赤く、プリズムの光の如く柔らかくも鮮やかな輝きを放つ。
ある者は美しいオパールのようだと言い、またある者はダイヤのような輝きだと息を呑んだ。

そしてその光さえも奪う黒が、この輝きは己の物だと知らしめるかのように滑るように舞う。

誰もがほう、と息を飲み、その輝きの持ち主を確かめたいのに、すぐに深い闇が隠してしまうのだ。
このホールの中で、あまりにも目立っているというのに、誰しもがその姿を上手く認識出来ないでいた。
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