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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


「あぁ、なるほどそれは失礼しました…。いやぁ、ですがやはりデビュタントボールは良いですな!今年は特に才知溢れる有望な方が本当に多い!これはカルヴァン王国も安泰ですな。」

ハッハッハ、なんて笑いながら去って行く後ろ姿にポカン、として思わず立ち尽くす。

「大丈夫ですか?申し訳ありませんね、術で少しは気配を弱めているのですが、完全に消すわけにも行かず。」

手を取られ、顔色を伺うように見るルシスさん。
あぁ、確かにホールへ入って歩いている時は物凄い視線を感じたが、今はそれほどでもない。魔法って便利だなって思いつつ、その使い方があまりにも繊細で驚いた。

「い、いえ…これもやらなきゃいけないことですから。」

ハイデスさんがまだ居ないのが気になりつつも、キョロキョロしてしまう。

そうしているうちに、今日の夜会が始まった。
ホール中央で誰かが挨拶をして、淡い金髪に柔らかい上品なゴールドの服に身を包んだ青年がうやうやしく礼をして、一人の女性と踊り始めた。

「…華やかな方ですね。」

「えぇ、あれがこの国の王子ですよ。カイルス・フォン・カルヴァン、ここ3000年遡っても彼が最も優れていると言って良い。あの歳で既にハイデスに引けを取らない程の魔力を有しております。踊っているのは恐らく宰相の娘でしょうか…今年がデビュタントだったようですね。」

おおお、すごい……本物の王子様なんだ。遠くて良く分からないけど、キラキラしてるなぁ。
ていうか、3000年って…どういう感覚だ??そういえばこの世界の時間感覚が良く分からない。
うんうん考えていると、それに気が付いたルシスさんが教えてくれた。

「王族はその魔力量にもよりますが、250から400年くらいの時を生きます。まぁ、平均すると300歳程度になりますね。なので一代100年くらいの時を国王として過ごしますので、30世代分全ての人間達と比べても彼が優れている。そういうと、中々の男でしょう。」

「さ、さんじゅう、世代…」

具体的な数字に、もはや良く分からなくなりつつもそれだけ彼が優秀で、期待されているのだろう。
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