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私を愛したモノなど

第3章 2 暖かな黒の中で


会場へ近付くにつれ、街は華やかさが目立ち遠くに高くそびえ立つ王城が見えた。時刻的にはもう遅い時間なのだが、今日が白夜の日だということもあって街を歩く人々がかなり多い。広場には露店や大道芸が人々を楽しませ、どこかお祭りのような雰囲気すらある。

「本当に、明るいですね…。」

「えぇ、一年で一番日の長い時です。ですが、いくら明るいからと言っても、白夜の夜は気を付けるんですよ。昼と夜との境が分からなくなり、時の狭間で迷子になっては天使達に拐われてしまいますから。」

「え、…な、何ですかそれ。」

「フフフ、昔から言う、子供の躾みたいなものですよ。ですが、忘れないでおくべきです。…ほら、着きましたよ。私達も行きましょうか。」

急に怖い話をするルシスさんに、少し驚かされながらも、きっと緊張してる私を和ませてくれようとしてるんだろうな、と嬉しくなった。
会場に近付くと豪華な馬車が既に何台も停まっており、華やかな装いの貴婦人達が優雅に手を取られ歩いて行く。

差し出された手を掴むと、ふんわりと身体が浮くような、そんな軽さを感じた。
ちゃんと出来るかな、転ばないかなと内心ドキドキして地面に脚を下ろすと、本当に身体が軽かった。ドレスの裾を引きずる、あの重たく煩わしい感覚も全くない。

「少し、動きやすいように魔法を掛けさせて頂きました。これで多少思うように動けるでしょう?」

「すごい…ありがとうございます!」

どうなってるのかと思ったが、地面に触れない程度、ほんの少し浮かせているらしい。
そんな繊細なことが出来るのかと思ったが、あのルシスさんならその程度何ともないのだろう。
入り口中央から少し離れた場所へ馬車を停めてくれたお陰で、少しだけ歩き方や動きの確認が取れた。
手を引かれ、少し回っても問題ない、寧ろ練習用ドレスより動きやすい。転ぶ心配が無くなったところで、会場へと向かった。

本当に、まだ比較的早い時間だと言うのにホールには沢山の人がいて本当に華やかだった。
男性ですら、身に纏う服の色が鮮やかな色が多く、真っ黒なのは本当にルシスさんだけなのではと思うくらいだ。

その為か、ルシスさんに手を引かれている時にかなりの視線を感じた…うわぁ、やっぱり目立つんだ!これはルシスさん効果なんだろうな、そうだよなこれだけ格好いいんだもんな、と思いながら緊張で自然の視線が下を向いた。
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